柄本佑、たった一言でドラマを動かす声と色気 30歳を過ぎてにじみ出る人間的な魅力

柄本佑、たった一言でドラマを動かす声と色気 30歳を過ぎてにじみ出る人間的な魅力

 俳優、柄本佑の人気が急上昇中だ。柄本明、角替和枝を両親に持ち、妻は安藤サクラ、弟・時生も俳優で、義理家族も芸能一家という、言わずと知れたサラブレッドである。03年に映画『美しい夏キリシマ』で主演デビューを飾り、昨年の12月に33歳を迎えた柄本。これまでもその演技力は高く評価されてきたが、ドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)、『心の傷を癒すということ』(NHK総合)が放送中で、2月21日からは映画『Red』の公開が控えるいま、「色気」のある俳優としての支持を伸ばしている。

 幅広いジャンルや役柄をモノにできる役者はいるが、柄本ほど、いい男からキモイと言われる役、さらに普通の青年までを、「そこに生きる人」としてリアルな空気を宿して演じられる役者は少ない。

 2010年以降だけでも、向井理、松坂桃李、窪田正孝と大学生4人組を演じた、今ではかなりお宝感のある『僕たちは世界を変えることができない。』や、ナレーションも兼ねた『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』、『フィギュアなあなた』、『GONINサーガ』、『64(ロクヨン) 前編・後編』といった映画や、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』『あさが来た』『なつぞら』、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(いずれもNHK総合)、ドラマ『天皇の料理番』(TBS系)、『令和元年版 怪談牡丹燈籠』(NHK BSプレミアム)などなど、助演、主演を問わずにさまざまな役柄を演じてきた。

 ここ数年は、30歳を過ぎ、確かな演技に加えて人間的な魅力がにじみ出ているのだろう。2018年には、数奇な運命を背負った雑誌編集長の半生を演じた『素敵なダイナマイトスキャンダル』、佐藤泰志原作の『きみの鳥はうたえる』の演技で高く評価され、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほかの映画賞に輝く。『きみの鳥はうたえる』では、なんとなく漂い生きているような主人公が時折見せる暴力性やラストでの感情の爆発に、同じ人物の一面としての説得力を持たせ、共演した石橋静河、染谷将太とともに、まるでドキュメンタリー作品であるかのような湿度を乗せた。

『火口のふたり』(c)2019「火口のふたり」製作委員会

 柄本が他の同年代の役者と違った色気を感じさせるのは、R指定作品への出演をいとわずにやってきたことも大きいかもしれない。『フィギュアなあなた』でも変態性をいかんなく発揮していたが、昨年公開された『火口のふたり』では瀧内公美とのW主演で、激しい濡れ場を体当たりで演じきった。

 また柄本は弟の時生と08年より演劇ユニット「ET×2」を組んでおり、父・明を演出に迎えた17年の舞台『ゴドーを待ちながら』の稽古場を収めたドキュメンタリー『柄本家のゴドー』が2019年に公開。とても生真面目に演技に取り組む柄本の姿を垣間見ることができる。

 そんな柄本が吉高由里子主演の『知らなくていいコト』では、吉高演じるヒロイン・真壁ケイトの元カレのカメラマン・尾高由一郎に扮している。ケイトは週刊誌「イースト」の記者で、母(秋吉久美子)の急死をきっかけに、自身の父・乃十阿徹(小林薫)がかつて世間を騒がせた殺人犯だと知ることに。傷つくケイト。そこを「どうした?」と優しく慰める尾高がたまらなくいい男なのだ。

 第2話のラストでは、乃十阿の娘だと知りながら、かつて尾高が自分にプロポーズしていたことを知ったケイトが涙。すでに既婚者で子供もいる尾高は、ケイトを見守りながらも、決して肩を抱いたりはしない。その距離を保った男らしさがさらに尾高の好感度を上げ、そうしたしぐさをどこまでも自然体で見せる柄本に評価が集まった。

『知らなくていいコト』(c)日本テレビ

 第3話では、同じく乃十阿のことを知ってケイトとの婚約を破棄した、重岡大毅(ジャニーズWEST)演じる野中春樹に向け、尾高が「お前、最低だな」と投げ捨てるひと言が強烈な印象を残した。非常に静かな芝居で尾高の優しさを表現しながら、ほんの短いセリフで、物語を動かす強烈な引力を生む柄本。今後もどんなひと言で物語を動かしていくのか注目したい。

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