橋本淳が俳優として目指しているもの 『月極オトコトモダチ』を中心に2019年を振り返る

橋本淳が俳優として目指しているもの 『月極オトコトモダチ』を中心に2019年を振り返る

0から1を生み出すことの尊さ

ーー『月極オトコトモダチ』は、男女の恋愛と友情という永遠のテーマを描くと同時に、アーティストが何かを生み出すことの尊さも描かれていました。

橋本:役者は0から1を作り出す仕事というよりは、1を10にする仕事だと思っています。だから、“生む苦しさ”みたいなものを根本の部分では分かっていないと思います。ミュージシャンや監督・脚本家、自ら物語を作り出せる方々は本当に尊敬します。文章を書く、音楽を生む、常に自己表現なわけですから。しかも今はそうやって生み出されたものにすぐに批判も飛んでくる。まるで自分自身を否定された気持ちになってしまいますよね。そんな中でものを作り続ける方たちは本当にすごい。あまり評価されていない作品でも、0から何かを生み出した人には尊敬しかありません。

ーー作品の中で柳瀬はプライベートとしての自分と、レンタルオトコトモダチとしての自分の境界線がどんどんおぼろげになっていきます。橋本さんも普段の自分と役者としての自分をどのように切り分けているのでしょうか。

橋本:“普段の自分”と言っても、家族の前でも演じているとも言えるし、友達ごとに相手に合う自分になっているような感じはあります。自分がわからないからこそ、芝居を通じて探しているような感覚なのかもしれません。役者によっては、「スイッチがある」方もいると思うのですが、僕自身はまったくないんです。日常生活の延長に役がないと嘘だなと思ってしまうので。でも、「役が自分自身に残ってしまって辛い」みたいな格好いいことが言えるわけでもありません。クランクアップすれば、スッと普段の自分には戻るので。

 例えば舞台のお芝居だと、同じことを毎日やらないといけないのですが、同じ中にもその日の自分のコンディションを反映させたいと思うんです。朝起きて身体が軽いな、と思えばそれを演じる役に乗せたい。調子がいい自分を否定して、「いつもどおりやらないといけない」と頑なになるのは何か違う気がして。「いつもどおり」やろうと思っている瞬間にどっかで嘘が生じているわけです。だから日々の変化も受け入れてこそ、“同じ芝居”ができるのかなと考えています。あとはお芝居は基本的に一人ではできない仕事なので、一緒にお芝居をする方、現場を作ってくださるスタッフの方々の思いを受けて、自分がどう反応できるかということなんだと思います。一人だけでも人が変われば現場の空気は変わるので。毎回変化があるからこそ楽しい仕事だと思いますし、絶対に奢ってはいけない仕事だなと思っています。

ーー舞台の芝居、映画、ドラマの芝居の違いは?

橋本:映画が一番瞬発力を必要とされて、舞台は持久力、ドラマはその間のイメージです。根本的には同じで、目の前の相手とどう作り上げていくかということだと思います。最近、キャラクターの“わかりやすさ”が求められる作品が多いのですが、キャラクターは関係性の中で初めて生まれるものだと思いますし、それによってドラマが生まれると思っています。だからその部分がしっかりしている作品に出演できることが幸せだなと思います。

2020年は博打の年

ーー2019年は、映画『まく子』、ドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合)、舞台『キネマと恋人』『カリギュラ』など、さまざまな役柄に挑戦していた印象です。今後演じたい役柄などはありますか。

橋本:一昔前は、「殺人犯がやりたい!」「医者がやりたい!」という思いはありましたけど、今は全然ないですね。客観的に僕を観てくださった方が、こんな役をやらせたい、こんな役があっていると言っていただけることが何より楽しいので。どんな役者になりたいかと問われれば、「この人が出ている作品なら面白いだろう」と思ってもらえる役者ですね。それがどういう役者なのかはわかりませんが、今は一本一本大事にしていきたいなと。

ーー10代~20代の頃は学生の役などが多かったと思うのですが、30代前半というちょうど役柄も変化する時期かと思います。

橋本:そうですね。どちからというと童顔なので、誰かの弟役とかが多かったのですが、最近は「嫌な役」が増えてきました。舞台ではヒール役も多かったのですが、映像作品でも『これは経費で落ちません!』の専務役だったり、殺人犯だったり、悪役寄りな役が増えてきたのはうれしいです。

ーー今は役者も監督やプロデューサーも兼務することが増えてきましたが、橋本さんも願望は?

橋本:今は監督をやりたい、という思いはないのですが、0から作り出すところにもっと携わってみたいという思いはあります。舞台の場合は、準備期間が長いこともあり、脚本をはじめ、照明や音響に関してもスタッフさんとキャストが話し合える場があるんです。でも、映画やドラマの場合はそれぞれの部署が用意して、キャストは後から合流する形がほとんどです。創作段階から携わっているわけではないので、役者の中にはどうしても作品への愛情が薄い方もいるんです。予算やスケジュールの問題が一番大きいことは理解しているのですが、可能であれば映画やドラマも、製作の最初の段階から役者も参加できたらいいなと感じます。

ーー最後に、2020年に向けて一言いただけますか。

橋本:33歳になる歳で、まだあまり変わらないなという思いがあります。ただ、35歳になったときに変わりたいと思っているので、ホップステップジャンプの「ステップ」の年になるのかなと。2019年は新しい分野に挑戦できた年だったので、そこで得たものをどう応用していいくかを考えています。自分の中で博打をかけている年でもあるので、その中でどう楽しんでいけるかですね。今後も頑張ります!

(取材・文=石井達也/写真=池村隆司)

■リリース情報
『月極オトコトモダチ』
DVD、発売中
価格:3,800円+税
本編DVD+特典映像(メイキング・舞台挨拶・予告編)
画面サイズ:ヨーロピアン・ビスタ
音声仕様:ドルビーデジタル 2.0chステレオ
出演:徳永えり、橋本淳、芦那すみれ、野崎智子、師岡広明、三森麻美、山田佳奈
監督・脚本:穐山茉由
音楽:入江陽
劇中歌・主題歌:BOMI
製作:「月極オトコトモダチ」製作委員会
2018/日本/78分/カラー/ヨーロピアン・ビスタ/STEREO
(c)2019「月極オトコトモダチ」製作委員会
発売・販売:アミューズソフト
公式サイト:https://tsukigimefriend.com/
公式Twitter:@tsukigimefriend
公式instagram:@tsukigimefriend

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