年末企画:杉本穂高の「2019年 年間ベストアニメTOP10」 劇場アニメが類を見ないほど豊作の年に

杉本穂高の「2019年アニメTOP10」

 その他、泣く泣くランク外にした作品を挙げておく。

 『ぼくらの7日間戦争』、原作や実写映画の製作時の若者の戦う相手はわかりやすかった。ジェンダー、移民、地域経済の衰退、自然災害、ネットの悪意など、今の若者はものすごくたくさんのことと向き合い、戦っているのだということを見事に描いていた。『プロメア』が本当に面白かったので、トリガーは日本の娯楽映画を牽引する存在になってほしい。超平和バスターズの『空の青さを知る人よ』は、封切りが台風直撃で興行成績が伸び悩んだのは残念だが、『幸福路のチー』と並んで、30代へエールをおくる貴重なアニメだった。

 中国アニメーション映画は『羅生黒戦記』より個人的には『白蛇:縁起』のが好きだ。全編実演シーンで構成された『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジ LOVE キングダム』と『BanG Dream! FILM LIVE』は、メディアミックスにおける映画館のあり方について考えさせられた。この2本自体にストーリーはないが、コンテンツを追いかけてきたファンの心の中にはストーリーがあるのだ。人形アニメーション『ホフマニアダ ホフマンの物語』と『ちえりとチェリー』にも感動した。TVアニメの劇場版では『青春ブタ野郎』シリーズと『幼女戦記』の2本が印象に残った。

 TVアニメでは『ヴィンランド・サガ』『Dr. STONE』『鬼滅の刃』『キャロル&チューズデイ』『ケムリクサ』なども候補として検討していた。

 今年もたくさんの素晴らしい作品に巡り合うことができた。来年も良い作品に巡り会えますように。

TOP10で取り上げた作品のレビュー/コラム

唯一の「京アニ大賞」受賞作、小説『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に宿る“言葉の力”
『スパイダーバース』は写実の呪縛からCGアニメを開放するーー革新性手法に込められたメッセージを読み解く

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■リリース情報
『海獣の子供』
2020年1月29日(水)Blu-ray&DVD
完全生産限定版Blu-ray ¥15,000+税
通常版Blu-ray ¥5,000+税
通常版DVD ¥4,000+税
発売元・販売元:DMM pictures
(c)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会

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