J・J・エイブラムスの哀しき独り相撲 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』への同情

『SW』エイブラムスの哀しき独り相撲

 しかし、残念ながらこの映画は映画である以上に『スター・ウォーズ』なのだ。皮肉にもJ・Jが手がけた『フォースの覚醒』に出演したサイモン・ペッグも過酷な撮影を平気だと語った上で、「だって『スター・ウォーズ』だよ」と言っている。それくらい特別なシリーズの1作なのだ。完璧なものはこの世にないが、だからと言って「何とかした」程度では厳しい。世界中で愛され、グッズ展開をしまくって、現代の神話とまで謳った作品の最終作としては物足りないというのが本音だ。それにJ・Jもヤケになったのか、前半こそ堅実ながら、ところどころでいつになく無茶苦茶なことをしている。「あ、ここはもう諦めたのね」と諦めが伝わってくる展開もあり、やはり観るのが悲しい。映画製作にまつわるゴタゴタ、いわば場外乱闘で作品に意図せぬ悲しみが付加されているのが何より気の毒だ。

 ただ、こうも思うのだ。私は子どもの頃に『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)を観て、「メチャクチャ面白いじゃないか」と思った。今でもシリーズ通して最も好きなキャラはダース・モールとクワイ=ガン・ジンだ。ただし、公開当時の『エピソード1』の評判、というかプリクエルは全体的にボコボコだった。結局、歴史が繰り返されただけなのかもしれないが、歴史は紡いでいくことが大事だ。ユニバース化をブチ上げて、完成すらしないうちに打ち切りになった作品はたくさんある。そういった最悪の事態を避けるために奮闘したJ・Jにはジャパニーズ・サラリーマン・スタイルで心からこう伝えたい。J・Jさん、とりあえず本当にお疲れ様です。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
全国公開中
監督・脚本:J・J・エイブラムス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/skywalker.html

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