『呪術廻戦』の主役にも抜擢 声優・榎木淳弥、『BEASTARS』で見せるマルチな才能の一端

 テレビアニメや映画、ゲーム、そしてマーベル作品の主役の吹き替えと、多岐にわたって活躍している男性声優・榎木淳弥。着実にキャリアを積み重ねている彼は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の人気漫画『呪術廻戦』の主役、虎杖悠仁を演じることも発表された。榎木淳弥が2019年の秋クールに放送されているアニメで演じている3キャラクターから、彼の魅力に迫る。

板垣巴留 BEASTARS Vol.1
板垣巴留『BEASTARS Vol.1』(少年チャンピオン・コミックス)

 擬人化された動物たちの学園生活を描いた作品『BEASTARS』。この作品で榎木が演じるのは、無邪気で明るいラブラドールレトリバーのジャックだ。主人公であるハイイロオオカミのレゴシとは幼馴染で、彼の細かい変化にも気づくジャック。彼は、主人公の親友であるだけでなく、視聴者を作品の世界観へ導くナレーションの役割も担っている。

 この作品でジャックが初めてメインで登場するシーンは、ナレーションから始まる。視聴者はまだジャックというキャラクターの声を知らない状態で世界観の解説、そしてレゴシを第三者目線、すなわち視聴者に寄り添った視点に補足する形でナレーションを担う。満面の笑顔を浮かべたジャックが喋るシーンに移ってようやく、半人半獣の学校生活という特殊なストーリーに引き込む重要な役割を声だけで担っていたことに気づくのだ。

 榎木は、『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の館脇正太郎役で初めて主役を演じた。正太郎も犬系の少年であるが、ジャックとは真逆の内気でおとなしい少年だ。この作品で際立っていたのが、正太郎のナレーションだ。感情がこもったナレーションを軸にストーリーが展開していくのだが、正太郎が成長していくにつれ、声からも自信が感じ取れるようになっていく。初主演とは信じがたいくらいに、物語の中核を担っていたことが記憶に新しい。

 館脇正太郎に近い、真面目な高校生の少年である倉田武蔵は、現在第2クールが放送中の『この音とまれ!』のメインキャラクター。一見おとなしく見えるが、先輩の残した筝曲部が廃部にならないよう努力を続けたり、今クールでは全国大会に挑戦したりと、芯が強い武蔵の心情を丁寧に表現する演技が際立っている。外見から感じる印象とは裏腹に、信念を貫くキャラクターは榎木の演技によって一層魅力を増すのである。武蔵に類する代表的なキャラクターとして、人気ゲーム『刀剣乱舞』の堀川国広が挙げられるであろう。2015年1月にリリースされたこのゲームは人気を博し、『刀剣乱舞-花丸-』と『活撃 刀剣乱舞』の2つの全く違った方向性のアニメが制作された。榎木は各作品に合わせて、それぞれの国広を見事に演じ分けている。

 榎木の演技の幅の中で、最も意外と思われがちなのが、『真・中華一番!』のフェイのようなキャラクターだ。クールなイケメンであるフェイは、主人公、マオのライバル。出番はそれほど多くはないが、マオと切磋琢磨し、時にマオの成長を助ける重要な役どころである。榎木は『カードファイト!! ヴァンガードG』の綺場シオン役で、主人公のライバルキャラクターを務めたのが、連続アニメで初めてのメインキャラクターであった。5クールにわたって連続して放送され、シオンがメインの回も多く、主人公であるクロノと競い合って成長していく姿が印象的であった。

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