“キラキラ映画”に変化訪れる? 新たな監督たちの参戦と、主題の多様化

“キラキラ映画”の流れに変化

ライトノベル、4コマ漫画、楽曲……を原案としたキラキラ映画

 ティーン層を中心にヒットした作品は、今年ほかにどんなものがあっただろうか。まず『君の膵臓をたべたい』などを手がけた月川翔監督による、『君は月夜に光り輝く』がこの一群に挙げられるだろう。どちらとも、高校生の恋愛と死をテーマにしたライトノベルが原作の作品だ。“ライト”とあって、原作そのものが若年層に受け入れられやすいというのが大きなカギとなっている印象である。

(c)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

 SNS漫画家・世紀末による“4コマ漫画”を原作とした『殺さない彼と死なない彼女』も、その作品ビジュアルからしてキラキラ映画の系譜に連なるのだろう。ところがフタを開けてみれば、そこでは“自分の居場所”を求める者たちの普遍的な物語が展開。原作からの脚色や、作品テーマと映画製作の手法の合致、若い俳優陣の演技の妙味など、さまざまなギミックが施された作品となっていた。普遍的な物語と上質な仕上がりの作品とあって、口コミをはじめ、年齢を問わず広がりを見せたのだ。

(c)2019映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会

 また、MONGOL800による同名楽曲が原案の『小さな恋のうた』も、このくくりに入る作品かもしれない。本作は恋愛を主体とした作品ではないが、こちらもそのビジュアルからして、いかにもティーン層向けな印象を広く与えていたように思う。しかし、澄み渡る青空のように爽やかな青春模様の下には、沖縄の米軍基地問題や文化の違いによる壁など、思春期の若者たちの揺れ動くアイデンティティとともに根深い問題が提起されていた。

(c)2019「小さな恋のうた」製作委員会

 さて、ここまで足早に2019年の“キラキラ映画市場”を振り返ってみたが、劇中で描かれるパターン化していた若者たちの姿が、より多様化してきたと思える。誰かの死は、たんに恋愛を盛り上げるエピソードではなくなったし、少年少女の眩しい姿は、観る者に改めて社会問題を問いかけることもある。こうしてみると、劇中の若者たちの姿というよりも、作品の主題そのものがより多様化してきているのではないか。もういよいよ観客も作り手も、たんなる恋愛モノに退屈しているのかもしれない。だが同時に娯楽である映画くらい、外界と遮断された劇場という空間で、わいわいキャッキャと若者たちの恋愛模様を眺めていてもいいのではないかという思いもある。ともあれ、キラキラの源泉はあちこちにあるようだ。2020年の“キラキラ映画市場”の動向をチェックし続けたい。

※『L・DK』の「・」はハートマークが正式表記

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■リリース情報
『町田くんの世界』
11月6日(水)Blu-ray&DVD発売、レンタル同時リリース

<Blu-ray>
価格:4,800円+税
1枚組・本編+特典映像
片面2層/カラー/ビスタサイズ(16:9)/音声:1.日本語DTS-HD Master Audio 5.1h 2.日本語リニアPCM 2.0ch 3.バリアフリー日本語ガイド/NTSC日本市場向/バリアフリー日本語字幕

<DVD>
価格:3,800円+税
1枚組・本編+特典映像
片面2層/カラー/ビスタサイズ(16:9)/音声:1.日本語ドルビーデジタル5.1h 2.日本語ドルビーデジタル2.0ch 3.バリアフリー日本語ガイド/NTSC日本市場向/バリアフリー日本語字幕

特典映像(Blu-ray・DVD共通):
メイキング、舞台挨拶、予告編&スポット集

※仕様・特典などは予告なく変更になる場合がございます。あらかじめご了承下さい。

出演:細田佳央太、関水渚、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子
監督:石井裕也
脚本:片岡翔、石井裕也
主題歌:「いてもたっても」平井堅(アリオラジャパン)
原作:安藤ゆき『町田くんの世界』(集英社マーガレットコミックス刊)
製作幹事:日本テレビ放送網
制作プロダクション:CREDEUS
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会
公式サイト:machidakun-movie.jp
公式Twitter:@MachidakunMovie
公式Instagram:@machidakunmovie

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