『殺カレ死カノ』『シグナル100』など話題作続々出演 恒松祐里、複雑な10代の心境を体現する演技力

恒松祐里が体現する、10代の複雑さ

 11月15日から公開された『殺さない彼と死なない彼女』では、『虹色デイズ』でも共演した堀田真由演じる“きゃぴ子”の親友で、『3D彼女 リアルガール』ではクラスメイト役だったゆうたろう演じる八千代の姉・地味子という役で出演。学園ものであり、またTwitter発の四コママンガを原作にしたという前提以上に、繊細な映像表現でオリジナルの青春ドラマを紡いできた小林啓一監督らしさが出ている白眉な作品だけあって、やはり出演している若手俳優たちのレベルは極めて高い。そんな中で彼女が演じる“地味子”は、メインキャストの中でも名前の通り“地味”な位置づけのキャラクターでありながら、作品の礎と呼べる部分、例えばバラバラに進む物語をつなげる役割であったり、自然光を駆使した夕景の輝かしい場面に映える立ち居振る舞いであったりと、この映画にとって極めて重要な存在でありつづける。

『シグナル100』(c)2020「シグナル100」製作委員会

 今後の彼女の出演作を見てみると、橋本環奈が主演を務める一風変わった学園スリラー『シグナル100』が年明けすぐに予定されているものの、松本穂香主演の『酔うと化け物になる父がつらい』や先の東京国際映画祭で大きな話題を集めた『タイトル、拒絶』と、学園系映画から卒業していくような気配が見受けられる。もっとも、これまでキラキラした学園モノでは常に助演に徹してきただけに、そうした作品で正ヒロインを演じる姿を見たい気持ちはあるが、それ以上に、豊富なキャリアと持ち前の存在感を活かして20代をリードする女優へと成長してくれることに強く期待を込めたいところだ。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『殺さない彼と死なない彼女』
新宿バルト9ほか全国公開中
出演:間宮祥太朗、桜井日奈子、恒松祐里、堀田真由、箭内夢菜、ゆうたろう、金子大地、中尾暢樹、佐藤玲、佐津川愛美、森口瑤子
監督・脚本:小林啓一
原作:世紀末『殺さない彼と死なない彼女』(KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA/ポニーキャニオン
制作プロダクション:マイケルギオン
製作:「殺さない彼と死なない彼女」製作委員会
(c)2019映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会

『シグナル100』
2020年1月24日(金)全国公開
主演:橋本環奈 
出演:小関裕太、瀬戸利樹、甲斐翔真、中尾暢樹、福山翔大、中田圭祐、山田愛奈、若月佑美、前原滉、栗原類、恒松祐里、中村獅童
原作:宮月新・近藤しぐれ『シグナル100』(白泉社・ヤングアニマルコミックス)
監督:竹葉リサ
脚本:渡辺雄介
配給:東映
(c)2020「シグナル100」製作委員会
公式サイト:signal100.jp
公式Twitter:@Signal100_Movie

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