『グランメゾン東京』木村拓哉に「おっさん」!? 鈴木京香のギャップ溢れる奮闘の新鮮さ

『グランメゾン東京』鈴木京香の新鮮な奮闘

 またそのかけ合いも面白く、鈴木「私じゃ看板にならない」、木村「おばちゃんがもうちょっと有名だったらなー」、鈴木「私が有名だったら日本の恥なんて言われてるおっさんシェフと組んだりしない」と、木村をおっさん呼ばわりするのもスリリングだが、鈴木も普通におばちゃん呼ばわりされ、さらに酒飲んで荒れて「それを言っちゃあおしめぇよ」と寅さんのモノマネをする。三谷作品でコメディーは鍛えられてはいるが、最近の鈴木からは想像ができない演出だ。出てくるキーワードこそ年齢を感じさせるが、見ているうちにそのやりとりは90年代にタイムスリップしたかのような軽快さと可愛らしさがあり、年齢を感じさせない木村のペースに鈴木が見事に対応していく、この現役感が木村マジックなのかもしれない。

 木村は尾花と倫子の関係性を、「ビジネスパートナーという表現の仕方だと寂しくなっちゃうな……」と公式ページのインタビューで答えていたが、腐りかけていた尾花に料理の場を提供し、人の意見を聞かなかった尾花が倫子のアドバイスを聞くようになったりと、2人の関係は次第に変化していく。その心を開いていく姿は、若い人なら恋愛感情に繋がるのだろうが、そこはいい大人なだけに、お互いの絆をどういった感情で描いていくのかが今後の見どころでもある。

 レストランを舞台にしたドラマは、『dinner』(フジテレビ系・2013年)の倉科カナや、『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS・2019年)の石原さとみなど、オーナーが若い女性で、それを助けるように男たちが集結し店を作り上げていくというのが定番であるが、このドラマはヒロインも同年代で、夢に向かってともに作り上げていく大人の青春物語なのが他にはない面白さ。だからこそ今まで高貴で上品なイメージの鈴木が、みんなと一緒に奮闘をしている姿が、ドラマを特別なものにしていると感じる。このドラマは人生の再チャレンジがテーマだと思うが、実際は「再」ではなく、年齢を重ねた人が新しいことにチャレンジしていく姿を強く感じ、そこで大人のプライドを捨てるのか、こだわるのか、今回の鈴木の演技と相通じるものがあるのではないだろうか。

 鈴木は倫子という人を「すごく頑張り屋だと思います。自分一人でしっかりしないと、人を頼ってばかりではいけないと、そういう思いで仕事に励んできた女性。『グランメゾン東京』の皆と一緒にやっていくうちに、一人で頑張らなくていいということがわかっていくと思うので、自分自身も楽しみにしています」と公式インタビューで答えている。おそらく木村は皆が求めている木村拓哉を演じていくだろうし、脇役陣も安定した演技で木村をサポートしていくと思われるので、このドラマを更に面白くしていくキーパーソンはやはり倫子の成長であり、その変化をどう鈴木が演じるのか、ベテラン女優の腕の見せどころである。

(文=本 手)

■放送情報
日曜劇場『グランメゾン東京』
TBS系にて、毎週(日)21:00~21:54
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、及川光博、 沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子ほか
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/

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