Kis-My-Ft2 北山宏光の“愛されるプレイヤー”としての資質 『ミリオンジョー』と主演舞台での挑戦
何度か直接取材をさせてもらったこともあるが、インタビュー時にはつねに自然体。まるで雑談のような自然なテンションで、作品や役に対しての真摯な想いや、スタッフ、共演者への尊敬の言葉を語り、誰に対してもオープンで変な壁がない。メディア関係者でも、彼の取材を楽しみにしている人間は多いと思う。
また、1人でカンボジアへ旅に出ていたり、日本の演劇界で話題になり始めた頃、すでにニューヨークで『Sleep No More』を観ていたりと、毎度その視野の広さにも驚かされる。
今秋、北山には大きな挑戦があった。
それは約2年ぶりの主演舞台。彼が挑んだ『THE NETHER(ネザー)』は前作『あんちゃん』のように、日常的な会話や家族間の心情を描いたものではなく、設定は近未来。「NETHER」と呼ばれる仮想空間に作られたコミュニティで起きたある事案に対し、北山演じる捜査官・モリスが真相を突きとめようとするのだが、登場人物は男性4名(+少女役1名)のみ。さらにわずかな時間を除き、舞台上には演者2名しか登場しない。それぞれが言葉で相手を追いつめ、時に自らも追い詰められる緊迫したやり取りが続く濃密な会話劇だ。
ダンスはもちろん、大きな動きさえほぼないこの作品で北山は膨大なせりふを語った。客席で観てまず驚いたのはその口跡の美しさ。ITや犯罪に関する専門用語の語りも明晰で、スっと意味がこちらに落ちてくる。聞けば本作の共演者で歌舞伎の舞台にも立つ中村梅雀に日本語の指導を受け、せりふをレコーダーに吹き込んでもらって、言葉の抑揚等を勉強したという。こういう北山の役に対する真摯な姿勢が現場のスタッフにも共演者にも“愛される”要因のひとつだ。
ドラマ『ミリオンジョー』はまだ序盤ながら、毎回大きな波が呉井を襲う。真加田の熱狂的支持者である「週刊少年グローリー」の副編集長・左子(津田寛治)は何かを疑っているようだし、真加田と結婚するために漫画家になった森秋(今泉佑唯)の動きも気になる。さらに、死体を埋める際にヘルプを頼んだ岸本は真加田の指を切り取って冷蔵庫に保管し、なにかを企んでいる様相。運命共同体である寺師も精神的に疲弊しており、どこまで頼れるのかわからない。
果たして呉井と寺師はいつまで周囲の人々、そして読者を欺き「ミリオンジョー」の連載を続けられるのか。「主人公と観客は真実を知っているが、他の登場人物はそれを知らない」……この心理サスペンスの定石を愉しみつつ、手に汗を握りながら、北山宏光が魅せる振り幅の大きい演技にも注目していきたい。
■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p
■放送情報
ドラマパラビ『ミリオンジョー』
テレビ東京にて毎週(水)深夜1:35〜
テレビ愛知にて毎週(土)深夜1:50~
※BSテレ東では、2020年1月クールに放送予定
動画配信サービス「Paravi」にて全話先行独占配信
出演:北山宏光(Kis-My-Ft2)、萩原聖人、今泉佑唯、深水元基、永野、三浦誠己、武田航平、津田寛治、菅原大吉
ゲスト:岡田浩暉、木下ほうか、草刈麻有、渡辺裕之
原作:十口了至・市丸いろは『ミリオンジョー』(講談社モーニングKC刊)
脚本:政池洋佑
監督:榊英雄、柴田啓佑
チーフプロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、中野剛(東映ビデオ)
制作:テレビ東京、東映ビデオ
製作著作:「ミリオンジョー」製作委員会
(c)「ミリオンジョー」製作委員会
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/millionjoe/
公式Twitter:@tx_millionjoe