Netflixはなぜ“クリエイター重視”を実現できたのか? 坂本和隆ディレクターが語る、独自の方法論
「Netflixはクリエイターとの距離がすごく近い会社」
──Netflix Japanのオリジナルコンテンツの海外でのリアクションはどうですか?
坂本:すごくいいです。インターネット上の意見も指標の一つになると思いますが、実際にそのコンテンツに携わった方に別のオファーがあったのを知ると、よりそのリアクションの大きさを感じます。例えば、Netflix Japanオリジナルコンテンツを担当した監督に、アメリカのエージェントの方から「連絡したい」というお声がけがあったり、出演した俳優の方に他国のNetflixから、「次のオーディションに呼びたい」という連絡が来たり、様々なオファーが飛び交っている。こうした状況を見ると、日本のスタッフやキャストが全世界でより活躍していく予感がします。190カ国以上に作品を配信するグローバルプラットフォームだからできることだと思います。
──Netflixのオリジナルコンテンツはクリエイター発信のものも多いです。
坂本:Netflixオリジナルコンテンツの大きな特徴の一つに、コマーシャルブレイクを挟まないので尺の規制やその概念を越えて作品づくりができるということがあります。そのことで、必然的にクリエイターの自由度が高くなるのです。また、安全な労働環境も重視しています。10時間以内で負担がないスケジュールを目標に、Netflixでは平均7日~10日で1話を撮る。そうするともちろん予算もかかりますが、Netflixではグローバルに展開しているので、かけられる制作予算の感覚も異なり、クリエイターにとって従来の現場と異なる環境を整備できることも特徴かもしれません。コンテンツの自由さ、グローバルに展開しているNetflixだからこその環境が、クリエイターのやりやすさに繋がっていると思います。
Netflixはクリエイターとの距離がすごく近い会社です。クリエイターやキャストの方々がふらっとオフィスにいらっしゃって、自分や宣伝担当も含めて弊社の全チームと直接話すことで、社員としても「この方は、こういう風に作ろうとしているんだ」と勉強をして、そのクリエイターの意向を宣伝に活かしていくという進行がとれるんです。
──距離が近い故に、大変な部分も多いのでは?
坂本:そうですね。お互いの意見をぶつけてチャレンジングな作品を作るということは、全員ニコニコしながらできることはないですから。それでも会社全体で、クリエイターの思いと向き合って、コンテンツを発信するにあたって後悔のないアプローチは非常に重要視します。
──Netflix全体はもちろん、Netflix Japanもローンチ当初と比較してより広く認知された印象があります。早くから入社している坂本さんもその変化は感じますか?
坂本:感じますね。加入者が1億5,100万世帯を到達したことのみならず、社内でもバックアップ体制が充実しました。今では、作品を作る過程において、予算管理や法務、制作……と各業務をそれぞれのチームで支えられるので、僕の立場としては純粋に一つの作品をお客様にどう届けるかということにより専念できる環境になりました。