斎藤工が放つ眼光の鋭さ 『火村英生の推理 2019』は名作ミステリーを現代版にアップデート

斎藤工が放つ眼光の鋭さ 『火村英生の推理 2019』は名作ミステリーを現代版にアップデート

 9月29日に放送された『臨床犯罪学者 火村英生の推理 2019』(日本テレビ系)は、推理作家・有栖川有栖(窪田正孝)が火村英生(斎藤工)の下宿を訪ねていく場面からはじまる。過激派テロ集団「シャングリラ十字軍」のリーダー・諸星沙奈江(長谷川京子)との対決以来、どこか生気のない火村だったが、“ABCキラー”を名乗る連続殺人犯からの挑戦状に重い腰を上げる。

 ファンにはよく知られているように、『ABC殺人事件』はアガサ・クリスティの古典ミステリーである。兵庫、大阪で起きたイニシャルがAとBの被害者に対する殺人に続いて、火村が暮らす京都でCの事件が発生。ここまでは小説と同じ展開だ。また、被害者にはシャングリラ十字軍の関係者という共通項があった。そしてDの殺人が起きる。

 『火村英生の推理 2019』で事件のカギを握るのは、メディアとミステリーファンである。偶然にも、犯罪事件ブロガーとなった火村の教え子の学生・貴島朱美(山本美月)が一連の犯罪と『ABC殺人事件』の関係を調べていたが、警察の裏をかくトリックと愉快犯の組み合わせが劇場型犯罪を生む構図には、名作を単純になぞるだけでなく現代に更新する意図がうかがわれた。

 「有栖川先生の作品の主人公ならどうしますか?」という犯人の言葉に象徴されるように、『ABCキラー』には、王道ミステリーに対するメタ視点が貫かれている。また、登場人物の1人から朱美に向けた「安全な場所で事件の整理整頓をしている君こそ、単なる無責任な外野だ」というセリフは、犯罪報道を無批判に受け入れる受け手への批判と解釈することもできるが、最後に残されたピースが埋まり、意外な黒幕が明らかになる一連の描写からは、くだんのセリフに込められた別の意味が浮かび上がる。こういったダブルミーニングが各所に配置され、第三の存在が犯行に関わる図式には、犯罪をひとつの社会的な事象としてとらえる本作の立ち位置が表れているようだった。

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