『セミオトコ』を成立させた山田涼介の「アイドル力」 7日間で見せる「一代記」的な演技の幅

 もちろんセミオ自身も1日1日と大きく成長している。

 最初は無邪気な子どものようだったセミオが、恋を知ったことで、死ぬ恐怖を間近に感じるようになる。しかし、そこからさらに愛するおかゆが一緒に死のうと考えていることを敏感に察すると、本気で叱りつけ、「幸せな思い出を力にしてほしい」と諭すのだ。

 この変化を表現するうえで、山田は最初に人間離れした美しさと無垢な表情を見せ、そこから「人間の男性」の顔に変わり、最終的に第6話では神々しくやわらかな光を注ぐ「遠い存在」としての大きな優しさを見せた。

 そもそも山田がセミオトコを演じるようになったきっかけは、岡田からのオファーだった。その理由については岡田がラジオ番組『岡田惠和 今宵ロックバーで~ドラマな人々の音楽談義~』の中で「(山田主演の)『理想の息子』(日本テレビ系)を観て、この子とは仕事するかもなーいつかと(思った)」と語っている。

 山田に託されたのは、まずセミが人間になるという荒唐無稽な設定に説得力を与える、存在感のファンタジーさ。そして、赤ちゃんのような純粋さから大人の苦悩まで、一人の人間の成長と変化を一気に7日間の中で見せる「一代記」的な演技の幅。

 そして、幸せなことばかりじゃない、厳しく辛いことも多い、ままならない世の中でも、「大切なもの・大好きなもの」があれば、世界は違って見えてくると信じさせる「アイドル力」だろう。

 岡田は最初から山田を勝手に想定して企画したと語っている。しかし、これは「山田のためのドラマ」ではなく、「今も地中に潜っていて、地上に飛び出していくためのきっかけを探している人たち」の物語であり、それをリアルな説得力と心躍る儚くも美しいファンタジー感でカタチにするための欠かせない要素が、山田だったのだろう。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『セミオトコ』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~0:15放送
※一部地域で放送時間が異なる
出演:山田涼介、木南晴夏、今田美桜、三宅健、山崎静代、やついいちろう、北村有起哉、阿川佐和子、檀ふみ
脚本:岡田惠和
監督:宝来忠昭、竹園元(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)、布施等(MMJ)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日

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