『だから私は推しました』をアイドルオタクが見ると? 「現場あるある」の数々とそのリアリティ

ドルオタが見た『だから私は推しました』

 また、第4話でサニサイが出場を目指す「アイドルサマーフェスティバル」(通称アイサマ)というイベントは、毎年夏に開催されている国内最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」(通称・TIF)のオマージュであることがわかる。

 余談だが筆者も、今年の夏に知人に誘われ、TIFへの出場をかけたアイドルのライブイベントに行ったばかりだった。それゆえに、第4話のリアリティはすごかった(ちなみにその時応援したアイドル「メガメガミ」は、無事にTIFへの出場が決まっていた)。

 それ以外にも、アイドルオタク同士の飲み会や、チェキ会でのサインの内容、ライブハウスに来る客の所作など……とにかく、いたるところのディティールがリアルで面白い。さらに、サニサイの新曲が劇中で発表されるタイミングで、YouTubeにも新曲のMVがアップされるなど、ストーリー以外にも楽しめる要素が満載だ。

サニーサイドアップMV『サイリウム・プラネット』~よるドラ「だから私は推しました」~

 一方で、一年後の事件についても、まだ謎が多く気になるところ。これまでの愛の証言から、愛が突き落としたのは「瓜田」という男性であることが分かっている。瓜田は、愛がサニサイ現場に来るまで、ハナのTO(トップオタ。一番有名なファンのこと)だった人物。しかし、過剰な接触を求める瓜田にハナは辟易していた。愛はハナのために瓜田を突き落としたのか。

 第3話で、ハナにどんどんのめり込んでいく愛を見て、同僚が冷たく言う。

「共依存っていうんじゃないの、そういうの? カウンセリングとか行った方がいいと思うよ、マジで」

 ハナのために月に15万円もつぎ込み、給料が足りなくなったらチャットレディのアルバイトまでしてお金を稼ぐ愛。確かに、その関係は健全ではないのかもしれない。だけど、愛の頑張りによってアイサマのステージに立ったハナを見て、号泣するほど感動する愛の気持ちも、痛いほどよくわかる。自分の好きな人が、夢を叶える姿を見るのは嬉しい。しかも、その夢への一歩に、自分も少しでも貢献できていたならば、こんなに嬉しいことはない。

 人を好きになる気持ちには、終わりがない。自分でブレーキをかけるすべを知らないと、どんどん加速して、気がついたら取り返しのつかないところまで来てしまう。だけど、そこまでたどり着いた本人が不幸なのか幸せなのかは、本人にしかわからないのだ。

 愛とハナ、二人の関係は今後どうなっていくのか。事件の真相はなんなのか。今後の展開からも、目が離せない。

■みずさき
ライター。アイドルを中心にエンタメ系記事の執筆を行う。
また、アラサー女性4人組サークル「劇団雌猫」として執筆、イベント業も行なっている。
最新刊『本業はオタクです。 シュミも楽しむあの人の仕事術』が発売中。
Twitter:@samizusaki

■放送情報
よるドラ『だから私は推しました』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜23:59放送(全8回)
出演:桜井ユキ、白石聖、細田善彦、松田るか、笠原秀幸、田中珠里、松川星、天木じゅん、澤部佑、村杉蝉之介ほか
作:森下佳子
音楽:蔡忠浩(bonobos)
制作統括:三鬼一希
プロデューサー:高橋優香子
演出:保坂慶太、姜暎樹、渡邊良雄

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