阿部サダヲ演じる政治は明るいだけのキャラクターではない 『いだてん』第二部の“複雑さ”を体現

『いだてん』第一部と真逆の第二部の魅力

 前出の監督・松澤は、高石から「(政治は)ほんとは泳げんのちゃいますか」と言われたとき、「たとえ泳げなくとも、それを補って余りある魅力がある。だからまーちゃんのためなら人肌脱いでやろうと思うんだよ。政治家だって嘉納治五郎だって、まーちゃんのことほっとけない、そう思わせる何かが、田畑政治にはある」と力説する。その「何か」の実態と、それによって起こった出来事がこれから描かれるのではないか。

 政治の「何か」については、8月4日放送の29回で少しだけ明らかになった。ロサンゼルスオリンピックに行った際、選手の鶴田(大東俊介)が「(田畑の行動は選手のことを考えた上での)計算づくではないか」とも指摘している。政治がいないと水泳代表たちの士気はあがらなかったのかもしれないし、政治が「日本を明るくするため」に動いているということもわかった。ノン・プレイング・キャプテンの価値を、プレイヤーであった高石も認めることとなった。

 29回で見せられた政治のキャラクターの明るい部分は、一言でも言い表せる。しかし、それまでに描かれてきた政治の裏にある複雑さを、戦中、戦後の日本の様子と並行して描く……ということは、戦中、戦後のオリンピックの在り方も、単に「日本が元気になった」という明るい面だけではない複雑さがあるはずだ。そのことが、第一部とはまったく違う、『いだてん』の第二部の魅力であるように思うが、果たしてこの先はどうなるのだろうか。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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