『ルパンの娘』意外性のあるキャスティングが功を奏す? 過去最高の深田恭子との化学反応
深田恭子が泥棒一家の娘を演じる『ルパンの娘』(フジテレビ系)が好評だ。放送前は、ベタを上塗りしたような泥棒一家のビジュアルの既視感を指摘する声もあったが、フタを開ければ王道コメディとして話題を呼んでいる。
『ルパンの娘』の原作は横関大の同名小説であり、ドラマの演出を武内英樹、脚本を徳永友一という映画『翔んで埼玉』コンビが手がける。キレのあるギャグが炸裂する同作のカギを握るのはキャスティングだ。主人公・三雲華(深田恭子)が暮らす泥棒一家「Lの一族」は、父を渡部篤郎、母を小沢真珠が演じており、兄が栗原類、祖父母は麿赤兒にどんぐりという、見るからに怪しすぎるファミリーだが、原作の余白を生かした自由度の高いキャラクターを振り切った演技で表現している。
ところが、あらためて実年齢に目をやると、現在37歳の深田恭子に対して、渡部篤郎が51歳、小沢真珠が42歳であり、栗原類に至っては24歳という驚愕の事実が発覚する。現実にはありえないキャスティングのように思えるが、実は武内作品には「前歴」があった。『翔んで埼玉』では、GACKTに実年齢差27歳の高校生役をオファー(ちなみに二階堂ふみもGACKTと同級生の“男子”役)したほか、映画『テルマエ・ロマエ』では、古代ローマ人役の主要キャストに阿部寛や市村正親、北村一輝らを起用。封切り前に「顔の濃さと演技力で決めている」と評された配役で、古代ローマと現代日本を行き来する実写版タイムスリップコメディを見事に成立させていた。
マンガが原作の『翔んで埼玉』と『テルマエ・ロマエ』では、年齢や国籍を度外視した大胆なキャスティングが、観客が非現実的な設定を受け入れるのに一役買っているように見える。演出の視点からは、その大胆さも含めて王道のキャスティングととらえることもできる。「キャスティングでおおよその演出は終わる」と言われるが、多くの作品で、意外性のある配役が予想外のケミストリーをもたらしてきた。この点、原作ものの実写化を手がけてきた武内作品のキャスティングは、意外性が生み出す掛け算の演出と言えるだろう。