松田翔太が醸し出す狂気 『東京喰種【S】』原作を狭く深く掘り下げることで際立つ月山の魅力

松田翔太が醸し出す狂気 『東京喰種【S】』原作を狭く深く掘り下げることで際立つ月山の魅力

  昨今、レベルが上がってきている漫画実写化映画。『東京喰種 トーキョーグール【S】』もそのことを感じさせる1作だった。

 前作『東京喰種 トーキョーグール』では、人間社会内部に人間を捕食する新人類・喰種が紛れている世界の東京で主人公の大学生・金木研は“大食い”と恐れられる喰種・神代利世に襲われた時に起きた事故がきっかけで不幸にも利世の内臓を移植され、喰種と同じく人肉しか食べられない存在になってしまう。

 金木は喰種を助け人間と共存していく道を模索している老人の喰種・芳村やクールな女子高生の喰種・霧島トーカと出会い、彼が経営する喫茶店“あんていく”で働き始める。そして喰種を発見し駆除する国家組織CCGの喰種捜査官との戦いを経て、成長した金木は仲間たちとつかの間平和に暮らしていた。本作ではその後の話が描かれる。

 今作で驚いたのは原作の使い方の潔さと贅沢さだ。1作目も原作の1~3巻だけをまとめたコンパクトな話になっていたが、『東京喰種【S】』は4巻から5巻の途中までだけを忠実に映画化している。原作は計30巻の大長編であるため、大胆な決断と言える。

 上映時間も102分とコンパクトかつ原作に忠実で、エピソードの増減もほとんど感じさせない。唯一あるとすれば、原作でインパクトの強かった“喰種レストラン”の場面が変更されているが、この辺りは実写にするのがやはり難しかったのだろうか。

 前作では複数回あったバトルシーンも終盤に一点集中されている。それも原作ファンの間でも人気の高い変態“美食家”喰種の月山習を前面に押し出せば1本の映画としての強度が高まるという勝算があったからだろう。

 ただ人肉を食うことを目的としていない財閥の御曹司・月山は人間と喰種が融合した主人公・金木の肉を食すことに異常な執着を見せ、その目的のために手段を択ばず金木を追い詰めていく。とにかく見どころは月山を演じた松田翔太の怪演に尽きる。

 松田はこの月山というキャラクターに独自の解釈を見せ、アニメ版の宮野真守の強烈な演技とはまた違う抑制の効いた変態ぶりを見せる。彼が持つエレガントなビジュアルと身のこなしを強調し、ただ生きるためだけに人肉を食べる喰種とは違う自分の世界観を持った“美食家”として静かな狂気を見せていた。人肉を食べていると分かっているのに、それでも美味しそうに見えてしまう表情の演技も見事。

 月山の見せ場の1つと言える、原作ファンには人気の「ハンカチを嗅ぐシーン」なども決して下品にはならず、純粋に狂気が際立つ松田はまさに月山にふさわしい。アクションも直接的な残虐描写も前作より減ってはいるが、この月山というキャラの魅力で映画を引っ張ることができていた印象だ。

 そんな変態の月山に狙われる主人公、喰種になってしまった元一般人・カネキを演じる窪田正孝はちょっと根暗な普通の人の演技や徹底的にやられる様が上手いので月島の異常さをより際立たせる。今回は主人公としての活躍が少なく、ターゲットにされてしまう役なのだが、自身でスタントをこなすほど体を鍛えておきながら、受け身役に徹している。

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