『ザ・ファブル』漫画実写化として上質な一作 アクション×笑いだけにとどまらない本質をよむ

『ザ・ファブル』漫画実写化として上質な一作

 ファブル(寓話)と呼ばれてしまうほどの凄腕でどんな相手も即座に仕留める殺し屋だが一般常識は一切持ち合わせていない男が一年間カタギとして普通に暮らさなければならなくなる、という基本プロットだけで一定以上は面白そうなこの映画。

 原作は『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載中の同名人気漫画だ。設定だけならギャグ漫画的だが、本作は笑えるシーンも多くありながら、突発的な暴力描写やいつ死が訪れるかわからない裏社会の怖さも並列して淡々と描かれており、乾いた不思議な読み味の漫画になっている。

 シネコンでかかるメジャー映画として実写化した場合にどうなるのかと思っていたが、本作は想像以上にきちんと『ザ・ファブル』を映像化できていた。

 伝説の殺し屋ファブルが一般生活を始めた際に起きるギャップを笑いにするには、その前にどれだけ彼が超人的な存在なのかをしっかりと見せておく必要がある。その点においてこの映画は及第点を遥かに超えた出来を見せる。

 なにせファブルを演じるのは本邦きってのアクション俳優、岡田准一。3つの武術のインストラクターの資格も持ち、昨年公開の主演作『散り椿』では自ら殺陣指導も行うほどの身体能力を誇る彼はこの映画でもすべてのスタントをこなし、まさに超人としか言いようがない動きを見せる。アクション監督として参加している『ヤマカシ』『ボーン・アイデンティティ』のアラン・フィグルラスも「彼は特別だ」とインタビューで語るほどだ。

 時には岡田の動きが速すぎて上手くカメラに映っていないカットもあった。普通だったらボツになるところだが、それをそのまま映すことでファブルの存在に説得力を持たせることができている。他にもガンアクションやナイフアクション、近接格闘に、パルクールまで見せてくれるので岡田のスタントを見るだけで元が取れるレベルだ。

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