『キングダム』には日本映画界の夢が託された? 「再現不可能」の声を跳ね返した佐藤信介らの手腕

『キングダム』佐藤信介らクリエイター陣の手腕

 『キングダム』は2006年に『週刊ヤングジャンプ』で連載が開始された大人気漫画。秦の始皇帝が中華統一を果たすまでの物語を基に、天下の大将軍を目指す奴隷の少年・信の活躍と成長を描いた巨編だ。

 物語はまさに友情・努力・勝利の少年漫画の王道。春秋戦国時代、中華が七つの大国に分かれ覇権を争っていたこともあり、様々な豪傑が群雄割拠していたこの時代と、次々と強敵が現れる少年漫画的世界観が見事にマッチしたのが本作の人気の理由だろう。

 そんな『キングダム』の実写化が発表されたのは2018年4月に記念すべき50巻が出たタイミング。それを聞いたファンやネットの反応は芳しくなかった。「何でもかんでも実写化するな」という企画そのものへのツッコミもあれば、「キャストがイメージと違う」「邦画のスケール感じゃ再現不可能」などの意見もあった。

 原作を欠かさず読んでいる筆者も不安の方が先立っていたが、監督の佐藤信介は日本になかなかなかった本格ゾンビ映画にして大傑作の『アイアムアヒーロー』を撮った人物。これはもしかしたら大当たりの可能性もあるとも感じていた。

 そして2018年に公開された佐藤監督による漫画実写化『いぬやしき』や『BLEACH』を見て『キングダム』への期待値は否応にも高まった。もちろん粗削りなところや映画に話を収めるために無理が生じている部分もある。しかし、佐藤作品の魅力は邦画の枠を超えたスペクタクルな場面を見せてくれることと、漫画ならではのコテコテの熱いドラマを衒いなくやってくれること。ゾンビを撃ちまくったり、新宿上空でロボットバトルが繰り広げられたり、現代日本の街中で剣戟アクションをやっているのを見て、佐藤信介は邦画の可能性を広げてくれる作家だと思ったのだ。おまけに『キングダム』のようにスケールの大きい画やアクション、熱いセリフ満載の漫画なら絶対ハマるだろうとずっと楽しみにしていた。

 しかし、今回の『キングダム』はさすがの佐藤にとってもかなりの挑戦だったようだ。佐藤本人もインタビューなどで、本作のオファーが来た際は長年共に映画を作ってきた周囲のスタッフたちも「これは無理なんじゃないか」という反応だったと語っている。

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