『アベンジャーズ/エンドゲーム』への期待 MCUの一大シリーズ10年の歩みを総括する

MCU、一大シリーズ10年の歩みを総括

 思えば遠くへ来たもんだ……。武田鉄矢も裸足で逃げ出す巨大プロジェクトが、まもなく初めての“一区切り”をつけようとしている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)だ。マーベル・コミックの世界を完全映画化するプロジェクト、いわゆるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が始まったとき、まさかこんなことになるとは思わなかった。今やマーベル、ひいてはアメコミのファンは数十年前とは比べものにならないほど増えた。ここ日本でもマーベルのグッズをそこら中で見かける。大げさかもしれないが、世界が変わったとすらいえる。スタッフでもないのに感無量、私は客として観ていただけだが、やりきった気持ちで一杯だ。そんなわけで今回はMCUの足跡を総括しつつ、『エンドゲーム』への期待を書いていきたい。

 すべての始まりはゼロ年代まで遡る。あの頃は、ちょうどスーパーヒーロー映画がドル箱ジャンルとなりつつある時代だった。サム・ライミ版の『スパイダーマン』(2002年)シリーズ、そして『ダークナイト』(2008年)旋風が巻き起こるなか、マーベルも自社ブランドで映画を作り、クロスオーバーさせるMCU構想をブチ上げる。初手に当たるフェーズ1で、MCUはいきなり大胆に仕掛けた。『アイアンマン』(2008年)と『インクレディブル・ハルク』(2008年)を同年に公開したのである。しかも映画の内容も非常に挑戦的で、何はさておきロバート・ダウニー・Jr.がトニー・スタークを演じることに驚いたのを覚えている。今でこそ彼以外は考えられないほどの当たり役だが、当時のダウニーは薬物問題を抱えており、経歴も非アクション映画が圧倒的に多く、まさかアイアンマンになるとは予想しなかった。ところが蓋を開けてみれば……ご存知の通り、今やダウニーはMCUの顔である。

 もちろん全てがうまくいったわけではない。『インクレディブル~』でハルクを演じたエドワード・ノートンや、『アイアンマン』でローズを演じたテレンス・ハワードは諸般の事情から降板した。それにバナー博士がヒクソン・グレイシーに教えを乞うくだりなど、今だとあまりないかもしれない(つまりMCUにはヒクソンがいるのだ。サノスと戦わせろ)。そして正直に言うと……この頃、私はまだクロスオーバーが実現すると本気で思っていなかった。2つの作品にはエンドロール後の繋がりがあったものの、それは『プレデタ-2』(1990年)の宇宙船にエイリアンの骨があったようなもので、ある種の小ネタとして終わってしまうのではないかと捉えていたのだ。しかもアメリカでは『アイアンマン』→『ハルク』の順で公開されたのに、日本では『ハルク』→『アイアンマン』と逆に公開された。日米で公開時期はズレるものだが、逆になるというのも珍しい。今では絶対にありえないが、当時はそういう時代だった。

 しかし、私の勝手な心配をよそに『アイアンマン』『ハルク』はどちらも成功、マーベルは順調にフェーズを進めていく。まずは安定の続編モノ『アイアンマン2』(2010年)、次は宇宙の領域まで話がスケールアップする『マイティ・ソー』(2011年)、「アベンジャーズ」の原点となる『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)を発表。宇宙の彼方に住む神様と、第二次大戦時の改造人間という振り幅が広いにも程がある2作を立て続けに成功させた。この頃になって、ようやく私は確信した。もしかして本当にクロスオーバーが実現するのではないか。それも最高の形で……。

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