『きのう何食べた?』には期待しかない! 西島秀俊×内野聖陽、共通点は“色気”と”目”
本日よりスタートするドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。期待せずにはいられないだろう。西島秀俊と内野聖陽の共演。更にまさかの恋人同士。よしながふみの原作コミック自体が、互いを思いやる40代同性カップルの穏やかで暖かい食卓を描きつつ、彼らを取り巻くシビアな現実をも内包する秀作である。さらにちゃんと料理を作ることの幸せと大切さを教えてくれる“食”の漫画でもある。テレビ東京深夜の飯テロドラマは『孤独のグルメ』以降ずいぶんお世話になってきたが、さらに西島秀俊と内野聖陽の組み合わせとなると、「盆と正月がいっぺんに……」と言うと大げさすぎるだろうか。
情報が解禁されるごとに原作ファンの「ピッタリ!」という声が加速していったこの組み合わせ。全く違うタイプの同世代俳優ではあるが、共通点があるとすれば、それは、色気と茶目っ気のある、少年のような「目」だ。
西島秀俊には、いくつかの変遷があるように思う。1月期のドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)、スペシャルドラマ『名探偵・明智小五郎』(テレビ朝日系)ときて、『きのう何食べた?』に至る今、大きなシフトチェンジの時期にあるのではないか。正直に言えば『メゾン・ド・ポリス』でおじさまたちの筆頭として一番若い設定とはいえ、西島の名前があった時は、妙にショックだった。それはこれまで年齢を感じさせる役柄があまりなかったために、彼の年齢に対してこちらが全く頓着してなかったからと言える。しかしそれは杞憂にすぎず、先輩のおじさまたちにイジられる可愛さあり、いざという時のかっこよさありと、実に魅力的だった。伊藤淳史とのおなじみのコンビ姿が愛おしい『名探偵・明智小五郎』もそうだ。
『ダブルフェイス』『MOZU』(共にWOWOW、TBS)や『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ・カンテレ系)等、2012年から2017年あたりの主演ドラマは、演出の凄さ含めて日本のテレビドラマ史上これ以上ないのではないかという傑作アクションドラマ揃いだった。だが、内に秘めた筋肉を思わせるようなハードボイルドな役柄が多かっただけに、朝ドラ『純情きらり』(NHK総合)の杉冬吾役での照れたようなクシャクシャの笑顔と目をこするクセのような、もはや彼自身なのではないかと錯覚させる愛すべき姿を見ることができなくなってしまったのが少しばかり寂しかった。だから、そのキュートな魅力と、磨きがかかったアクションシーンの両方を楽しむことのできる「オジサマ」西島秀俊という新たな局面は最高なのではないか。
もちろん、西島の魅力はそればかりではなく、『アンフェア』(フジテレビ・カンテレ系)や『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)などで描かれる「報われない男」ポジションも一興。映画『さよならみどりちゃん』の星野真里が恋焦がれるいい加減な男が彼女を凝視する定まった目の尋常じゃない色気もまた一興である。
彼の目は時折動かなくなる。じっと何かを凝視する。『純情きらり』の冬吾が戦争を目の前にした時もそうだったし、『さよならみどりちゃん』も、黒沢清監督の『LOFT』の男もまたそうだった。狂気を孕んだ静かな目は、我々観客を少しばかり不安にさせると同時に虜にする魔力を持っている。だがその目は一方で、クルクルと少年のように笑い出す目でもあるのだ。