『はじこい』深田恭子の言葉が胸に刺さる 横浜流星との出会いがもたらした“変化”とは?

『はじこい』横浜流星との出会いがもたらした“変化”

 順子は自身の現状を受け入れながらも、もう一度自分のことを好きになれるかもしれないきっかけを由利からもらったように思える。きっとそれは由利にとっても同じであるように。

 また、由利を通して「当時の自分がかけてほしかった言葉」だけでなく、徐々に「当時の自分が本当は言いたかったこと」を母親に対して発するようになる順子。第5話では、由利に対して「あんな子が東大に受かる訳がない」と言い放った自分の母親に対して、順子が「私の生徒を否定することは許さない」と怒りを露わにしていた。

 また、第8話で受験に対するモチベーションが一気に下がってしまった由利を自分が追い込んでしまったのではないかと順子が落ち込むシーンがある。そこでふと「私はお母さんみたいにならないと思ったんだけどな……」と順子の本音がポロリ。隣にいた順子の母親の顔にも、思わず複雑な表情が浮かんでいた。娘の心の中で起こっている確かな「変化」に気が付いているのだろう。

 順子の母親も、自身は私立女子大出身ながら、夫は東大卒、甥っ子の雅志(永山絢斗)も優秀となれば、一人娘の順子を無事東大に送り込むことだけが専業主婦である自分の務めだと疑わず一心不乱に取り組んできたのだ。それがために、娘に無理強いをした自覚もあるだろう。それも「東大合格まで、順子のため」だと。だから、自分のことをいまだに責め、母親としての自分を許せないからこそ、娘の現状から本人以上に目を背けてしまうのかもしれない。

 母親との関係にしこりを抱えながら、思い通りにはいかない現実を生きる順子。その役どころを、32歳のいわゆる“THE・イタイこじらせ女子”としてではなく、悲壮感を漂わせず、卑屈にもならずに演じることができるのは、深キョンしかいないだろう。本作の原作は、集英社「クッキー」連載中の持田あきによる同名少女漫画。あくまでポップにラブコメとして、さりげなく「人生」を説く本作は、深キョンなしにしては成り立たないのだ。

■Yoshika Umeda
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画、ドラマが好きで2018年の劇場鑑賞映画本数は96本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji

■放送情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』
TBS系にて、毎週火曜22:00~
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる