『はじこい』深田恭子の言葉が胸に刺さる 横浜流星との出会いがもたらした“変化”とは?

『はじこい』横浜流星との出会いがもたらした“変化”

 『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)の見どころでもある四角関係は、後半戦突入後もますます加速している。その攻防の中心にいる、一筋縄ではいかないヒロイン順子(深田恭子)。彼女が単なる“こじらせ女子”に終わらず、ここまで人を魅了するワケとは?

 母親の期待を一身に背負って、東大合格のため受験勉強に青春時代の全てを捧げた「勉強アスリート」の順子。だが、大学受験が失敗に終わり、それを母親に一方的に責め立てられ拒絶されたショックをいまだに引きずり、母娘関係には消えないわだかまりが残ったままだ。以後「目標」や「情熱」をすっかりなくしてしまった順子は、ただただ何となく時間を過ごし、気が付けば「32歳、未婚、契約社員塾講師」という高校生時代の自分からは考えられないような現実を無気力に生きていた。

 「勉強しかしてこなかった」と自虐的に言いながらも、順子はその経験から誰よりも「目標に向かって努力することの尊さ」を知っている。また、本気で取り組むことこそが自分の自信に繋がり、誰かからの共感を得たり、認められたり、周囲を勇気付けることだってあることを経験上、身に染みてわかっているのだ。自分が頑張ることが母親の喜びになることも。また当時の自分は確かに母親からとても大事にされ、愛されていたことも。そして、順子自身もそんな頑張っている自分、周囲からの期待に応える自分が好きだったのだ。

 だからこそ、東大生への道が閉ざされた後の順子は次なる「目標」が見つけられずにくすぶり続けていた。その間、何より順子自身が一番自分のことを認められず苦しかったのではないだろうか。母親に受験失敗や結婚についていまだにネチネチ言われながらも、それも当然の報いとして受け入れようとしている。今、頑張っているものがない順子には言い返す術もなければ、その権利もないと思っているかのようだ。

 そんな中、父親に無理やり塾に連れて来られた由利(横浜流星)と出会う。中学生レベルの問題集も解けない由利の勉強に付き合うために、2人して夜遅くまで夢中で取り組む場面がある。その時間は、順子の中で忘れかけていた「学ぶこと・新たに吸収すること」自体が楽しく、自分自身を豊かにするものであるという価値観を呼び覚ますきっかけになったのではないだろうか。

 順子の最大の魅力は、「どんな自分でも受け止める強さがある」ことだ。学生時代に勉強を通して得た「努力は必ず報われる」という確信を持っているからこそ、色んな要因があったとは言え東大合格を勝ち取れずその後の人生がパッとしないことについても、誰のせいにするでもなくきちんと自身で消化し受け入れている。「何事も自分次第」であり「自分の人生は自分だけのもの」だということを、後悔の念も含めて痛いほど理解しているのだ。

 由利と出会ってから、彼のことが当時のいきいきしていた無敵な自分と重なる部分が多いのかもしれない。順子が由利にかける言葉は、彼を通して実は当時の自分にかけてあげたい内容で、高校生だった自分が誰かに「言ってほしかった」一言なのだろう。由利との触れ合いで、順子は「あの頃の自分自身を抱きしめてあげている」のだ。

 だから順子の発言は決して「上から目線」でも単なる「お説教」でもなく、同じ目線で発せられているからこそ由利やその周囲の人々の心をダイレクトに打つ。

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