『まんぷく』安藤サクラ、“朝ドラの難題”クリアし国民的女優へ 表現者としての類い稀な存在感
『まんぷく』(NHK)で、朝ドラ初の“ママさんヒロイン”として駆け抜けた安藤サクラ。彼女が演じる福子のパワフルなキャラクターから、日々元気をもらっていた方も多いのではないだろうか。
安藤といえば、昨年フランスで開催された第71回カンヌ国際映画祭にて、出演した『万引き家族』がパルム・ドール(最高賞)を受賞したことも記憶に新しい。さらに本作での演技において、自身2度目となる日本アカデミー賞最優秀主演女優賞も獲得したばかりだ。こうして今や国内外にその名はとどろき、“国際派女優”となった安藤だが、この流れはここ最近にはじまったことではない。デビュー当初から見せていた彼女のその異能の片鱗に、早くから気づいていた方も少なくないだろう。
安藤は、父・奥田瑛二が監督した『風の外側』(2007)で正式な女優デビューを飾ると、『むずかしい恋』(2008年)、『俺たちに明日はないッス』(2008)、『愛のむきだし』(2009)と、ミニシアター系の作品を中心に立て続けに出演し、メキメキと頭角をあらわしてきた。早くも転機となったのが、園子温監督の『愛のむきだし』だろう。一大センセーションを巻き起こした本作で安藤はカルト教団の一員に扮し、艶かしくエキセントリックな好演で、その存在をスクリーン内で爆発させた。
その後は、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム 』(2010)、『愛と誠』(2012)、実の夫である柄本佑と主演した『今日子と修一の場合』(2013)、実姉・安藤モモ子が監督した『0.5ミリ』(2014)など、ジャンルや作品の規模を問わずキャリアを重ね、『百円の恋』(2014)で初めてのアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得。限られた予算や撮影スケジュールの中でロバート・デ・ニーロ並みの驚異の肉体改造までをも実現し、女優の凄みを世に知らしめ、そのほか数多くの女優賞を獲得した。
すでに触れたように、安藤は業界でも有数の芸能一家であることが背景にあり、潜在的な表現者のDNAを継いでいることがうかがえる。これはなにも血統の話ではない。生まれてから日々を過ごしていく中で、つねに何かしらの表現に触れてきたことは、やはり他の人々には持ちえない、稀有な財産となっているのではないだろうか。