竹野内豊×C・ケイト・フォックス、実在の人物を見事に表現 『いだてん』が描いた夫婦愛の形

『いだてん』が描いた夫婦愛の形

 兵蔵にだけ見せる安仁子の甘い表情、ハネムーンのような態度に対して、四三や弥彦は冷めた表情を見せる。しかし劇中盤で明かされた兵蔵の病状を考えると、安仁子演じるシャーロットが見せた柔和な表情は、限られた兵蔵との時間を大切に過ごす、彼女にとって束の間の時間だということが伝わってくる。妻として、パートナーとして、夫を支え続ける安仁子の強さを、シャーロットは凛とした表情で演じているのだ。

 ドラマ本編放送後に放映される『いだてん紀行』では、元々画家であった安仁子が描いた兵蔵の肖像画が放送された。兵蔵の横顔が描かれたその肖像画からは、安仁子がどれだけ彼を愛していたかが伝わってくる。劇中やっかまれがちな大森夫妻だが、国も社会的立場も超えて結ばれた2人の関係は、その振る舞いから確かに伝わってくる。史実に基づいた2人の関係を、竹野内とシャーロットが丁寧になぞっていることが伺える。

 第9話最後、ストックホルムへ到着した四三ら一行。オリンピック会場に降り立ったシーンでは、四三や弥彦の目線をなぞるように映像が1人称視点となり、彼らが感じたであろう興奮がそのまま伝わるような演出も魅力的だった。ストックホルムオリンピックまであと1カ月。どのような運命が彼らを待ち受けているのだろうか。

※古舘寛治の「舘」の字は、正しくは、外字の「舎官」。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45 
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45 
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ/綾瀬はるか、生田斗真、杉咲花/ 森山未來、神木隆之介、橋本愛/杉本哲太、竹野内豊、 大竹しのぶ、役所広司
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
写真提供=NHK

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