中村倫也が深田恭子に投げかけた“現代文”の問題 『はじこい』交錯するそれぞれの想い
だが、落ち込んでいる暇はない。匡平にとって東大受験が普通のやり方では合格できないように、男子高校生と33歳の鈍感塾講師との恋だって普通のやり方ではうまくいくわけがないのだ。33歳の東大卒のエリート商社マン・雅志と、33歳の元ヤン教師・山下というライバルに勝つためには、“とりあえず”でも、“がむしゃら”でも勝ち目はない。だが、匡平は雅志の受験ノウハウを頼りに勉強し、そして山下と同じように毎朝チャリで通って元気をチャージするしかなかった。そんな自分に苛立ちを隠せなかったのだ。このまま同じことをしていてはダメだという気づきが、ここから匡平をどう変えていくのか。
また一方で、この物語で注目したいのは、順子と母親・しのぶ(檀ふみ)との関係性だ。勉強のできる自慢の娘に対して、“こうであってほしい”という期待が、やがて“こうあらねばならない”という呪いとなってしまった母親。期待が大きかったからこそ、順子が東大受験に失敗したことを順子以上に落胆し、その事実を何年も受け入れられずにいた。第5話では、匡平の東大合格を願ってやまない順子に、当時の自分を重ねて、万が一匡平が不合格になったときのことを心配するシーンも。
「相手の心情を先入観なく正確に理解しないと、主張の押し付け合いになっちゃうでしょ。人間関係と一緒」
そう説く順子自身、恋愛や親の心情を理解するのが難しいのは、そこにどうしても主観が入ってしまうからだ。そして、主観には正解がないように、一概にはどれが正しくて、どれが間違っているとは言い切れない。それぞれが、それぞれの正義を持って行動しているからだ。自分の人生も、ドラマの視聴者のように客観的に見られたら、どんなにわかりやすいだろう。しかし、だからこそ人生は面白いのだと思いたい。ドラマという参考書を照らし合わせながら、交錯するそれぞれの心情を正しく理解する練習問題を、次回も問いていこうではないか。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』
TBS系にて、毎週火曜22:00~
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/