アカデミー賞作品賞は『ROMA/ローマ』が最有力? 例年以上に“大混戦”な情勢を読む

第91回アカデミー賞を占う

 ところで、日本からのノミネートがあった長編アニメーション賞と外国語映画賞はどちらも密かな混戦が繰り広げられている。細田守監督の『未来のミライ』がジブリ以外では初めてとなる日本アニメの候補入りを成し遂げた長編アニメーション賞を見ると、ゴールデングローブ賞こそ『スパイダーマン:スパイダーバース』が勝ち名乗りをあげたが、『犬ヶ島』との一騎打ちムードはいまだ健在。本来であればこの部門で他を寄せ付けない強さを誇るディズニー作品だが、『シュガー・ラッシュ:オンライン』も『インクレディブル・ファミリー 』も、よほどの作品ではないとこの部門で相手にされてこなかった“続編映画”という壁が立ちはだかる。となれば、アニメーション映画史上No.1ヒットの後押しを受ける『インクレディブル・ファミリー』の方が壁を超えられるポテンシャルを持ち、三つ巴といった形勢が成り立つ。

『万引き家族』(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 そして外国語映画賞では『おくりびと』以来10年ぶりに日本映画『万引き家族』がノミネート。こちらも『ROMA/ローマ』というおそろしく高い壁がそびえ立つ(前述の通り作品賞候補入りも果たした作品は確実に外国語映画賞を受賞している)が、『ROMA/ローマ』が作品賞を受賞する流れとなれば、他の作品にも受賞の可能性が生まれるとの見方もないとはいえない。そこで浮上するのは下馬評で2番手評価といわれていた『万引き家族』か、監督賞と撮影賞で候補入りを果たし勢いがある『COLD WAR あの歌、2つの心』か。はたまた『COLD WAR』のパヴリコフスキと同様、この部門で受賞した経験があるフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクの『Never Look Away』か。日本時間2月25日に行われる授賞式は、例年以上に面白くなりそうだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■配信情報
Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』
独占配信中
https://www.netflix.com/roma

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