菅田将暉の狂気が暴走 『3年A組』は“10代の抱える闇”にメスを入れる

『3年A組』菅田将暉の狂気から目が離せない

 つい先日まで『まんぷく』(NHK総合)で、実直な弁護士役を観ていただけに、そのギャップに唖然としてしまう。先週より放送がスタートした『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)は、初回から菅田将暉演じる主人公・柊一颯の狂気が暴走し、背筋が凍った。冷酷な眼差し。不吉な笑み。容赦ない制裁。菅田の鬼気迫る芝居は圧巻であった。

 彼の一連の企ては、3年A組のクラスメート景山澪奈(上白石萌歌)の自殺に関する“ある真実”を生徒たちに引きずり出させることが目的の一つにある。第1話の終盤、本業の教師らしく熱を込めた言葉を続けざまに浴びせるシーンがあった。

「自分が助かれば他人がどうなっても構わない?」
「過去の自分が、今の自分を作る! だから過去から逃げてるお前も、お前も、お前も! 極めて幼稚なガキのまま成長が止まってるって訳だ。そんな奴らが一体何から“卒業”するって言うんだよ!」
「お前らの考えがいかに脆く、弱いものなのか、思い知らせてやる」

 目を背けてきたこと、不条理な現実、今まで気づかなかった都合の悪い事実、己の弱み……等々。これらをある日突然、しかも震え上がるような恐ろしい方法で白日の下に晒そうとする。こうした役割は、いわゆるダークヒーローと呼ばれる存在が担うことがある。

 柊の要求にケリをつけるべく、クラスメートの1人・茅野さくら(永野芽郁)を犠牲にして助かれば良いという考えが出て、誰も反論しないというシーンは、歪んだ集団が抱える闇を映し出しているようだった。反論しなかった理由は皆それぞれあるのかもしれないが、そんなクラスの集団力学こそ、柊が嫌悪したことなのだろう。

 モラルの欠如。アイデンティティーの拡散。柊が生徒たちに放った言葉である。本作はいじめ問題が関連しているようであるが、もし柊のこうした言葉が妙な後味を残すというのであれば、それは視聴者にとっても“他人事ではない”ことの表れでもある。いじめであれ、何であれ当事者として物事を考えなければならない時は必ずあるもの。柊がクラスメート全員に“課題”を出し、ひとつの答えを出させたのには相応の理由があるはずだ。“全員がその問題を考えなければならない”ことというのはきっとどんな組織やグループにも生まれ得る。『3年A組』は、10代の人間たちの間で起きた暗い現象にメスを入れるようでありながら、実は世代問わず観て考えるべきテーマがあると言える。

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