『まんぷく』“理想の夫”は誰? 長谷川博己、大谷亮平、要潤ら三者三様の大人の魅力

『まんぷく』“理想の夫”は誰?

 夫となると、好みだけの問題ではなく、長い目で見て総合的に判断したうえで一緒にいたいと思えることが重要だろう。時代や状況によって理想の夫像も変化するが、人生で最高のパートナーと苦難を乗り越えて成功するには何が必要なのか、この作品の中から答えを見つけることができそうだ。

 今のところ、理想の夫として考えるなら、真一を推す声が一番大きい。大手商社勤務から「たちばな栄養食品」の経理、営業を任される能力、そして仕事は出来るが温和で穏やかな性格の持ち主であり、欠点を探すことの方が難しい。世良(桐谷健太)と「たちばな栄養食品」が作る「ダネイホン」の偽物を販売した会社に抗議(脅し)に行ったときもスーツを完璧に着こなしながら、腰が引けているギャップに萌える視聴者が続出した。真一は癒し系の一面としても、この物語を支えている。

 また、婿という観点から、鈴目線で捉えても、3人のうちで一番安定していて、安心して娘を任せられるのも真一ではないだろうか。売れない絵ばかり描いている婿、発明家で逮捕されがちな婿はどう考えても不利だ。

 福子の夫・萬平は実業家として「世の中の役に立つ仕事がしたい」という理想に燃えている。「あんなに心のきれいな、まっすぐな人はいません」と福子が断言するほど、お金に執着がないどころか、頓着しない。戦後の何もないところから新しいものを生み出す萬平の才能、そして純粋でまじめな性格は魅力的ではあるが、仕事に没頭するあまり周りが見えなくなることもある。彼のアイデアを形にして最大限生かすためには、集中できる環境とサポートがどうしても必要になってくる。

 福子は、「萬平さんにしか作れないものがある」と成功を疑わないが、彼はまだ志半ば。今後、大きな進化を遂げるのは間違いなく、福子のような未来志向の女性には最高の相手ともいえる。一緒に成長していける高揚感、達成感もあり、変化を恐れないメンタルの強い相手とは相性も良いはず。萬平は理想の夫に進化しつつある、可能性を秘めた理想の夫といえる。

 しかし、真一、萬平よりも、筆者は忠彦を“理想の夫”に推したい。戦争からの帰還後、画風が変わったことにより売上も立てるようになったという点もあるが、何より妻・子どもたちへの溢れんばかりの愛が滲み出ているからだ。鈴が家出をした際には、彼女を画に描くことでその心を解きほぐした。画家であるだけに観察眼が鋭く、福子や萬平に伝えるさりげない言葉には、核心をつくことも多い。成長した娘のタカ(岸井ゆきの)と神部(瀬戸康史)の仲が気になり、親バカモード全開になるところも微笑ましい。

 忠彦の妻、克子は三姉妹のうちで一番しっかり者で、ちゃっかりしていて、はっきり物を言うタイプ。そんな克子が子育てのことで愚痴をこぼさず、商売下手の画家である夫の金銭感覚に不満を言わないところにその答えがある。忠彦は、日常の些細な不満や不安を吹き飛ばすほど、理想的な夫だということだ。

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、瀬戸康史、中尾明慶、橋爪功、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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