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『獣になれない私たち』のテーマは近代文学にも繋がる? その凄さの本質を徹底解剖

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 ガッキーこと新垣結衣と松田龍平が主演するTVドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)、通称『けもなれ』は、日本のドラマのなかでは、かなり異端的な位置付けとなる作品だ。それは多くのドラマに存在する、主人公をとりまくモヤモヤを浄化する快感「カタルシス」がなかなか与えられないことが主な要因である。そのせいで展開は読みにくく難解なものとなり、輝くようなガッキーの魅力は押しつぶされて、一見くすんでいるように感じられる。

 恋愛や結婚に経済的な概念をとり込むことによって、既存の恋愛・結婚観における男性優位のシステムを暴き、多くの男性にも理解できる角度から、対等な取引としての現代的な平等関係を作り出すことに成功していたのが、『けもなれ』と同じく野木亜紀子の脚本とガッキー主演の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系/2016年)だったが、これに強いシンパシーを感じた視聴者にとって、今回は物足りないと思わせるものになっているのではないだろうか。

 だが本作『獣になれない私たち』は、脚本家にとってもガッキーにとっても、だからこそ先に進んだ、深みのあるドラマ作品になっている。モヤモヤしている視聴者も、このドラマには何か異様なものがあることを感じ取り、目が離せなくなっている人が多いのではないだろうか。ここでは、そんな本作の凄さの本質がどこにあるのか、複数の角度からじっくりと考察していきたい。

「あの完璧な笑顔がなんかキモい」

 新垣結衣が演じるのは、IT企業の優秀な営業職を務める「深海晶(しんかい・あきら)」だ。田中圭が演じる交際中の恋人「京谷(きょうや)」とは、なんとなく結婚するような流れになってきていて、仕事もプライベートも充実した、順風満帆な生活を送っている。あくまで外側から眺めた限りでは。

 しかし本人にしてみると、その内情はかなり過酷だったり、納得し難いものだったことが、ドラマを追っていくことで明らかになる。優秀で気配りができるばかりに、複数の仕事を任されて激務に追われ、上司や取引先からはパワハラやセクハラなどを受けて笑顔で対処しなければならないし、恋人の京谷からも、かわいさや癒やしのような古い価値観による役割を求められ、違和感を持ちながら付き合い続けている。そしてそんな日々の鬱憤を、クラフトビールを提供するバー「5tap」に寄って痛飲することでなんとか乗り切っているのだ。

 そんな彼女のオアシスであるはずの「5tap」で、彼女と同じく常連の客である、松田龍平が演じる公認会計士の根元恒星(ねもと・こうせい)が、自分のことをこんな風に評しているのを立ち聞きしてしまう。

「前から思ってたんだよね。なんか、お綺麗どけど嘘っぽくない? あの完璧な笑顔がなんかキモい。俺、ああいう人形みたいな女ダメだわ」

 内心でショックを受ける晶だったが、この暴言が自分の生き方を考え直すきっかけにもなっていく。なぜなら、それは一理ある真実のことばだったからだ。そんな嘘のない恒星の方が、表面的に優しい京谷よりも、晶にとっては「一緒にいて楽」な存在になっていく。そしてこのセリフは、主人公を演じる新垣結衣にも向けられているように感じられるところに、ゾクッとした感覚を覚える。

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