年末企画:藤原奈緒の「2018年 年間ベストドラマTOP10」 鮮烈かつ多幸感に溢れる傑作

 『おっさんずラブ』は優しすぎる人たちの、性別も年齢も立場も越えた「好き」と、“自分にとって、あるいは相手にとって一番大切なこと”はなにかを考えることの大切さを描いた。そういう意味では、『中学聖日記』もまた、共通した部分があると言える。禁断の恋の結末うんぬんよりも、有村架純や吉田羊が、いかに型やルールに囚われず“自分にとって一番大切なこと”を掴み取ることができたかということが重要だった。

 『半分、青い。』は人生のあらゆる煌きと残酷さを凝縮した異色の朝ドラ。シーナ&ザ・ロケッツの「YOU MAY DREAM」と共に忘れられない名場面が多かった。『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』は、西谷弘の演出もさることながら、岸井ゆきの、山口紗弥加、高橋克典が強烈だった。

 坂元裕二脚本『anone』は、時に幽霊も加わって、ニセモノの家族たちが、身を寄せ合ってニセ札を作る、どことなく淋しく、優しい一本。風車が回る情景の美しさと、死の光景が心にいつまでも残る。

 『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』は、おじさんたちのわちゃわちゃした会話をひたすら楽しむためのドラマだったのだが、大杉漣が途中で亡くなってしまったことで全く違う様相を見せることになった。最終回、現実と、現実に限りなく近いフィクションだったはずのものが大きく乖離し、それをなんとか繋ぎ止めようとする作り手の思いを、視聴者が祈りながら見守るかのような、そんな時間を共有するドラマ体験は、皮肉にも、大杉が与えてくれた1つの優しい奇跡だったのかもしれない。

【TOP10で取り上げた作品に関連するレビュー】
有村架純と町田啓太、本音を晒け出した“大人”たち 『中学聖日記』1章から2章への大きな変化
異色の朝ドラ『半分、青い。』とは何だったのか? 秋風羽織の“3羽の鳥”に込められていたもの
“ジェリコの壁”は壊せるのか? 『あなたには帰る家がある』が描いた男女の本音

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

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