田中圭、松岡昌宏、町田啓太 損な役回りだった“婚約者ポジション男子”に変化!?
非の打ち所がないとは書いたが、彼らの抱く女性観には違和感あり。『中学聖日記』の勝太郎は、教師という仕事に邁進していた聖の意志を尊重せず、自分の勤務地に来させようとしたし、自分の母親が聖に「いずれは仕事を辞めるように」と言ったときもそれを否定してはくれなかった。『大恋愛』の侑市も母親の言いなりで、尚がアルツハイマーの前段階とわかった途端、妻や自分の子供の母親としては不適格になったと考え、当然のように婚約をなかったことにする。どちらも女性を所有物扱いしている感があって、そこに悪意はなくとも、本当に女性にとって優しい男性なのかは疑問である。聖と恋に落ちた晶(岡田健史)や尚と結婚した真司が、女性のやりたいことを尊重する男性であるのとは対照的だ。
その意味でも損な役回りの婚約者ポジションだが、救いがあるのは、最近のドラマでは彼らが別れた後もヒロインをサポートする立場へと進化していること。特に『大恋愛』の侑市は、尚に「他に好きな人ができたので婚約解消してほしい」と言われたときも怒らず冷静に話し合おうとし、そこが『獣になれない私たち』の京谷や『中学聖日記』の勝太郎より大人だった。そして、アルツハイマーの症状が進む尚を主治医として支え、真司との結婚も祝福してきた。これはもう、名作『やまとなでしこ』(フジテレビ系)の東十条(東幹久)に次ぐ 、善良なる元婚約者の誕生である。きっと尚の後にお見合いした女性医師ともうまくいくはず。一方、勝太郎は上司の原口(吉田羊)と付き合おうとしており、酸いも甘いも噛み分けた大人の女性である原口に古い女性観を壊されて、さらにいい男へと成長しそう。結果的にパーフェクトな男になるポテンシャルは充分だ。『獣になれない私たち』の京谷だけは迎える結末が読めないが、晶にフラれてふっきれた感もあり、晶でも元カノでもない第三の女性とあっさり結婚するのかもしれない。どうも、かわいそうな境遇の女性に魅かれてしまう傾向のある京谷が、楽しく恋愛している姿も見たい。
俳優にとっても、嫉妬したり激昂したりまたは泣いたりという感情の起伏が見せられる婚約者役はおいしい役どころ。視聴者に「私なら婚約者の方を選ぶ」「元彼の方が魅力的な男性だったのに」と言わせてこその、このポジション。最終回まで3人の好演を見守りたい。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/