旧作上映に映画館の“意志”が現れる 「午前十時の映画祭」10年間の文化的功績

旧作上映に映画館の“意志”が現れる

 もちろん“熱情”だけではビジネスとしてサステイナブル(持続的)にならないですから、僕が手がけるときにはこのコラムで書き続けてきたようなあらゆる手段を駆使して集客を目指します。もちろん他の映画館もそれぞれに武器を活かして魅力的な企画を作りあげています。

 たとえこの上映単独では儲けられなくても、ご来場してくださったファンの方々に強い感動を味わっていただければ、通常の上映にも必ず良い影響があるはずだ、映画ファンのみならず、映画館ファンをも作るのだ、という“意志”が、旧作上映企画には込められています。

 そしてここには必ず映画館運営者のキャラクターが現れます。新作を並べたスケジュール表からは見えてこない“誰がやっているのか”という顔がのぞきます。それが面白い。映画館は、どこも同じではないのです。

 立川シネマシティでは先日、「ソウル・ミュージック・ムービーフェス」というブラック・ミュージックが大好物である僕の趣味全開の上映を行いました。新作とはなんの関係もない、最高のサウンドシステムで最高のソウルミュージックを僕が聴きたいからやった企画です。

 目玉として国内劇場初上映となる『ドリームガールズ ディレクターズカット版』【極上音響上映】を行ったのですが、やり方が悪かったのか集客がまま厳しく、折れそうな自分の心を奮い立たせるための、今コラムでした(笑)。

 集客は厳しくとも、きっと作った人たちだって聴いたことがないくらいの最高クオリティのサウンドで上映できたと自負しているので、くやしくないもん。

 年末か年始には、これにくじけず映画ファンにとって核爆弾級のデカい旧作上映企画、きっと実現してみせますよ。映画館の魂は、いまや旧作上映にこそ宿るんだ。

 ネット配信でもソフトでも観られる作品をあえてスクリーンでやるからこそ、そこに映画館の意義/価値が曇りなく輝く。

 You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)

(文=遠山武志)

■イベント情報
「午前十時の映画祭9 デジタルで甦る永遠の名作」開催中
2018年4月13日(金)~2019年3月28日(木)50週間
開催劇場:全国58劇場
入場料金:一般1100円/学生500円
上映作品:全27作品(新規外国映画18本、新規日本映画4本、アンコール上映5本)
主催:公益財団法人 川喜多記念映画文化財団、一般社団法人 映画演劇文化協会

■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。

『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:http://cinemacity.co.jp/

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