目黒シネマ・支配人が語る劇場カラーの作り方 「映画体験をさらに豊かにするために」

目黒シネマ支配人が語る、劇場カラーの作り方

 JR目黒駅から徒歩3分、目黒唯一の映画館として半世紀以上にわたり愛され続けている映画館・目黒シネマ。昭和30年から前身である「目黒ライオン座」「目黒金龍座」として看板を掲げ、昭和50年に「目黒シネマ」としてリニューアル。近年では、劇場スタッフのコスプレやオリジナル館内装飾、そして魅力的なラインナップで多くの映画ファンから注目を集めている。

 このたび、リアルサウンド映画部では、支配人の宮久保伸夫氏にインタビューを行った。いかにして現在の“目黒シネマ”が作られたのか? これまでの取り組みや、映画館で映画を観る醍醐味まで、熱く語ってもらった。

 最初に取り組んだのはマイナスをゼロにすること

劇場入口 上映作品にあわせた「シネマ名言」

——目黒シネマは数ある映画館の中でも強い“個性”を持っていると映画ファンの間で話題となっています。その“個性”をどうやって宮久保さんは作られてきたのでしょうか。

宮久保:目黒シネマの“個性”を担う要素としては、スタッフのコスプレ、展示物、そしてトークイベントが三本柱となっていると思います。番組編成に関しても、新作の組み合わせのほかに、チョイスシリーズというプログラムが3つあります。1つ目は、「目黒シネマ名作チョイス」。私がお客様に観ていただきたい組み合わせで、最近では『GO』と『ピンポン』の窪塚洋介さんの特集を行いました。2つ目は、「自作と観る監督チョイス」。監督の新作に対して、自分の作品とどんな作品が合うか監督自身に選んでもらうという贅沢な2本立てです。これまで、是枝裕和監督、大根仁監督、山田洋次監督、塚本晋也監督、宮藤官九郎監督と錚々たる方々に参加していただきました。そして3つ目は、「俳優チョイス」。これはまだ一回きりなんですが、田中要次さんに自身が俳優になったきっかけの作品2本を選んでいただきました。この劇場で仕事をするようになってから18年が経ちましたが、少しずつ工夫を重ねながら、“目黒シネマ”という独自のカラーを作ることができたと思います。

——現在の目黒シネマになるまでにはどんな経緯があったのでしょうか。

宮久保:私が来た時は、経営的にも厳しく、スタッフも高齢化していて、どこか元気のない空気があったかもしれません。地下にあるということもあり、劇場全体が暗く、古い映画館でした。今は、地上から階段で降りてきていただいて、劇場入口には、公開中、次回作のポスターが並び、何が上映されているかひと目で分かるようになっています。が、当時は入口に自販機がズラッと並んでいて、何が上映されているのかも非常にわかりづらかった。ライトに関しても、どうせ1日数人しか来ないのだから、暗くてもいい、という考え方で。赤字経営が続いていたので、改装をしたくてもお金をかけることはできない。そこで、スタッフ自らペンキを塗ったり、床を張り替えたり、配置を変えてき、劇場を明るくすることから取り組んでいきました。最初はプラスを生むことよりもマイナスをゼロにすることが大変でした。

地上から地下の場内へ向かう階段の途中には、上映作品の関連チラシがズラリ

——それに大体何年ぐらい?

宮久保:8年ぐらいでしょうか。プログラムも今のスタイルに変えていったこともあり、お客様にも変わろうとしている変化を感じていただいていたと思います。そして、なんといってもプログラムですね。プログラムの変化にも気付いていただいて、少しずつお客様の数が増えていきました。

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