『昭和元禄落語心中』失敗や悲しみが芸の肥やしに 2人の死が岡田将生に遺したもの

『昭和元禄落語心中』が描く光と闇

 本作では、人生の失敗や暗い部分と同時に、それが芸の肥やしとなることも描かれている。先述の助六の「芝浜」然り、菊比古も家族に捨てられたことから落語の門を叩き、自分の居場所を探し続けてきた。その結果、“孤独な落語”という自分だけの落語を手に入れることができたのだ。この光と闇のコントラストを丁寧に描くことで、彼らの落語がより魅力的に映し出される。

 しかし、落語家としての目標であり親友でもあった助六を失うことは、菊比古にとって埋めきれない穴となった。菊比古は、助六にまで捨てられたと感じ、天涯孤独を決意する。そして、落語とともに心中することを誓った。ゆえに菊比古から八代目八雲となり、唯一無二の芸が完成されたのだ。

 次週から与太郎(竜星涼)編へと戻る本作。八雲は、助六の影を感じたからこそ与太郎を弟子にとった。心中を決めていた八雲だが、与太郎となら助六との果たせなかった約束をやり直せるのではないかと。八雲が与太郎との生活の中で、助六がいつも言っていた「客がいねえと落語はできねえ」という信念を思い出したとき、助六の死が“芸の肥やし”となっていくのだろう。

(文=馬場翔大)

■放送情報
ドラマ10『昭和元禄落語心中』
NHK総合にて、毎週金曜22:00~放送
出演:岡田将生、竜星涼、成海璃子、大政絢、山崎育三郎
脚本:羽原大介
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama10/rakugo/index.html

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