脚本は、のんと一緒に 『ミライさん』谷口マサトPが語る制作の裏側とLINE NEWSの未来
ーーそれでは今回未来を舞台にしたのも何か理由があったのでしょうか?
谷口:未来を題材にした物語は、だいたいディストピア(悲惨な未来)です。天国よりも地獄を描いたほうがページビュー数は上がるので気持ちは分かります(笑)。画力やインパクトが違いますからね。でも、『ミライさん』の場合は“明るい未来”というテーマを掲げ、視聴率よりもメッセージを届けるというのを主体にして今までと違うものを作ってみようとしました。単に視聴率だけ狙って作ると従来と似たコンテンツが出来上がってしまうんです。LINE NEWSは、利用者6,300万人(2018年3月時点のMAU)で影響力が強いため、暗い未来を見て沈むよりは、明るい未来を描いたほうがいいかなと。なので、視聴者から「元気になった」という声を頂いているのは、素直に嬉しいです。
ーー視聴率に左右されないドラマ作りということですね。
谷口:視聴率も欲しいのですが(笑)、それだけではないということですね。LINE NEWSでは、どのようなユーザーが見ているか、そしてユーザーがコンテンツを見てどのような態度変容が起きたかを調査できます。番組のメッセージが届いているかを数値化できるのも強みです。
ーーなるほど。本作は近未来が舞台ですが、セットが古民家風というギャップも面白い点でした。
谷口:近未来を作るのが結構大変で、中途半端に変に作ると安っぽくなってしまいます。なのであえてギャップを狙いました。「明るい未来」というテーマに合わせ、明るい配色にしています。登場人物もみんな明るい。今回制作していて面白かったのは、のんさんの意見をかなり取り入れたところですね。本当に助かりました。最初の段階でミライさんはもっと良い人だったのですが、のんさんから「もっとクズでいい」と言われ、ディスカッションしながら一緒に脚本を仕上げていきました。
ーーのんさんの意見が反映されたドラマと言っても過言ではないのですね!
谷口:演者の言うことを聞いているときりがないので、お願いしたことをやってもらう方が良いという意見もあると思います。ネットドラマってまだまだ小さい規模ですから、逆に小さいことを活かして柔軟に対応しながら作ってもいいじゃないかと思っています。
ーー恋愛ものではなく、あえてホームドラマというのも狙いがあったのでしょうか。
谷口:LINE NEWSは様々な方が見ているので、まずはどんな年齢でも楽しめるドラマ作りを目指しました。ただ特定の属性の方だけに番組を届けることもできるので、今後はよりターゲットを絞ったものも試みたいと思っています。あとはホームドラマって最近見ないので、この機会に新たな家族像を描いてもいいかなと思ったんです。
ーー第1話でロボットが恋人になるというあり得る設定にも惹かれました。
谷口:やっぱりロボットって描きやすいんですよ。例えば『義母と娘のブルース』(TBS系)は感情を殺してきた女性を通して、人間の感情とはなにかを問うドラマだったと思います。同じようにイノセンスなロボットを通して見ると人間の感情を描きやすいんです。