北川悦吏子と野島伸司の狙いが一致  修羅場と急展開で魅せる『半分、青い。』『高嶺の花』

北川悦吏子と野島伸司の狙いが一致?

「接点がなさすぎて理解できない」を極める

『高嶺の花』(c)TBS

 さらに、2つ目の共通点として挙げられるのは、「男性優位の世界観をベースにしつつ、それを打ち破ろうとするパワフルな女性を描いている」こと。

 『半分、青い。』は「女なのに」「まだ結婚できない」などの女性軽視のセリフが多く、『高嶺の花』は裏切られてストーカーやキャバ嬢になる、不倫を強要されたあげく脅される、師匠の命令で男を寝取るなど、こちらも女性を軽視するようなシーンを多用している。

 北川と野島にしてみれば、そんな苦境を打ち破るヒロインを描こうとしているのだが、現在の視聴者にしてみれば「男尊女卑」という印象が拭い去れない人もいるだろう。「いつの時代だよ」「90年代じゃあるまいし」などの批判があがるのは、2人のベースが90年代にあるからなのかもしれない。

 事実、90年代の北川は、『君といた夏』(フジテレビ系)、『ロングバケーション』(フジテレビ系)、『最後の恋』(TBS系)などで、厳しい状況下に置かれた女性を描いていた。自身は女性であるにも関わらず、立場が低く、苦しめられるヒロインを描き続けていた感がある。

『半分、青い。』(写真提供=NHK)

 一方、野島が90年代に手がけた『高校教師』(TBS系)、『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)、『この世の果て』(フジテレビ系)なども同様で、ヒロインが苦しみから抜け出そうともがく様子を描いていた。2人の主戦場がフジテレビとTBSだったことも含め、作風が似ていたのだ。

 もちろん北川も野島も、同じようなことを2018年で行えば「男尊女卑」と言われかねないことはわかっているだろう。だからこそヒロインたちが、「女性はこうあるべき」という縛りから抜け出そうともがく姿が描かれている。

 「自分に置き換えて共感できる」も、「自分と接点がなさすぎて理解できない」も、視聴者を連ドラに引きつける方法だが、北川と野島は後者を極めようとしている。「理解できなくても感動させる」ことはできるからだ。

「一筋縄ではいかない」最終回への期待感

『半分、青い。』(写真提供=NHK)

 そして3つ目の共通点は、先の読めないクライマックスへ向けて一気に畳みかける態勢に入ったこと。

 『半分、青い。』は、すでに鈴愛と律が再会し、力を合わせて発明に挑むことが明かされている。微妙な距離感の関係だった2人が、「最後に最も近い距離感になることで、恋愛関係に発展するのか」という視聴者の興味を誘いはじめているのだ。

『高嶺の花』(c)TBS

 『高嶺の花』は、ももと直人の再接近に加えて、正体が明かされた新庄千秋(香里奈)の存在、家元の後継問題など、まだまだ波乱含み。視聴者に「『ももと直人が結婚式をやり直す』という杓子定規的なハッピーエンドにはならないのでは?」と感じさせる不穏なムードは、「さすが野島伸司」と思わされる。

 鈴愛と律、ももと直人。ともに、いびつなカップルの形を描いてきただけに、最後まで一筋縄ではいかない展開が続くのではないか。たとえば、北川なら『愛していると言ってくれ』(TBS系)の榊晃次(豊川悦司)が初めて「紘子!」と声を発したシーン、野島なら『この世の果て』でヒロインがヘリコプターから飛び降りたシーン……。これまで2人はアッと驚く最終回を手掛けてきただけに、今回はどんな最終回やラストシーンを用意しているのか、楽しみでならない。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。全国ネットの地上波連ドラは、毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/奈緒、矢本悠馬、石橋静河、余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/清野菜名、志尊淳、山崎莉里那、小西真奈美
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

『高嶺の花』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00放送
出演:石原さとみ、峯田和伸、芳根京子、千葉雄大/升毅、十朱幸代/戸田菜穂、小日向文世ほか
脚本:野島伸司
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松原浩、鈴木亜希乃、渡邉浩仁
演出:大塚恭司、狩山俊輔、岩崎マリエ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/takanenohana/

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