ミュージシャンがドラマ・映画で大活躍! 星野源と峯田和伸は一線を画す存在に
また、ミュージシャンがドラマや映画で起用される一連の流れにおいて、星野源と峯田和伸は、特別な存在だと麦倉氏は力を込めて語る。
「『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で、新垣結衣さんの相手役を星野源さんが務めると知った当時はかなりの衝撃でしたが、『高嶺の花』で石原さとみさんの相手役を峯田和伸さんが務めるというのは、さらなる衝撃でした。これは完全に“賭け”に出たなと。しかし、よくよく考えてみれば、峯田さんは、岡田惠和さん脚本の『奇跡の人』(NHK BSプレミアム)で主演を務めた後、同じく岡田惠和さん脚本のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演し、自身のバンド、銀杏BOYZのファンだけでなく、お茶の間レベルで、その役者としての個性と存在感を知らしめていました。星野さんに関しては、00年代より松尾スズキさんが主宰する劇団“大人計画”の舞台に立ち続け、13年に主演した映画『箱入り息子の恋』及び『地獄でなぜ悪い』で、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、すでに役者としての評価を獲得していましたが、『コウノドリ』(TBS系)でメインキャストの1人として出演したことで、よりその認知が広がったように思います。峯田さんにも星野さんにも言えることですが、人気女優の相手役としての大抜擢は、単なる“話題性”ではなく、役者として段階的に上り詰めてきた彼らの“実力”と“評価”によるものだと感じます」
そんな星野源と峯田和伸に続く逸材は誰なのだろうか? 麦倉氏は、9月公開の映画に出演する渡辺大知と野田洋次郎の名前を挙げる。
「渡辺大知さんは09年の映画『色即ぜねれいしょん』など、野田洋次郎さんは15年の映画『トイレのピエタ』と、それぞれすでに映画で主演を務めている実力派です。野田さんは、『100万円の女たち』(テレビ東京系)で深夜ドラマの主演も務めており、9月7日に公開される『泣き虫しょったんの奇跡』では、主演の松田龍平さんの親友役として、これまでとは違う、かなり等身大の人物を好演しています。渡辺さんは、過去に出演した『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)や映画『勝手にふるえてろ』、現在放送中の『恋のツキ』など……言い方は微妙になりますが(笑)、デリカシーに欠ける、非常にガサツな雰囲気を発揮していて、“ダメ彼氏”役としての定着も見られます。また、渡辺さんは、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された、濱口竜介監督の『寝ても覚めても』(9月1日公開)にも出演していますが、これは役者としての実力が認められてこその起用だったのではないでしょうか。20代のミュージシャン俳優の中では一つ頭が抜けた印象です。
さらに言うならば、峯田さんが役者を始めるきっかけになった映画『アイデン&ティティ』を監督した田口トモロヲさんが、渡辺さんの初主演作『色即ぜねれいしょん』を監督しているというのも興味深い事実です。というのも、今やドラマや映画でお馴染みの“バイプレイヤー”である田口さん自身、ばちかぶりというパンクバンドのボーカリストであり、ミュージシャン俳優の草分けとも言える存在なので。その後、峯田さんが三浦大輔監督など、クセのある若手監督とタッグを組んだのちに、大役を演じるようになったように、渡辺さんもまた、三木孝浩監督の『くちびるに歌を』に出演するなど、注目監督の作品への出演が続いています。野田さんの役者デビュー作である『トイレのピエタ』の松永大司監督も、今後の活躍が注目されている監督のひとりです。昨今のミュージシャンの俳優の活躍の背後には、早い段階で彼らの役者として才能を見抜き、積極的に起用してきた監督たちの存在が、確実にあるような気がします」
今後もミュージシャンのドラマや映画への出演は続くだろうが、星野源や峯田和伸に続いて、大物女優の相手役を務める人物は現れるのか。音楽の領域だけでなく、表現者として活躍するミュージシャンたちの今後の活躍に目が離せない。
(文=大和田茉椰)
■放送情報
『高嶺の花』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00放送
出演:石原さとみ、峯田和伸、芳根京子、千葉雄大/升毅、十朱幸代/戸田菜穂、小日向文世ほか
脚本:野島伸司
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松原浩、鈴木亜希乃、渡邉浩仁
演出:大塚恭司、狩山俊輔、岩崎マリエ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/takanenohana/