くだらない偏見を打ち破る! 山崎賢人の努力がもたらした『グッド・ドクター』の成功

くだらない偏見を打ち破る山崎賢人の努力

 思えば、2018年1月クールで放送されていた『トドメの接吻』(日本テレビ系)もそうだった。作品にも、山崎にも期待していなかったのに、観てみたら殊の外面白く、おまけに「金や権力に執着するクズのホスト」として生きる一方で、愛を信じず、闇を抱える私生活での地味で暗い素顔には、純粋さや哀愁が滲み出ていた。演技派・門脇麦との不器用で純粋で、どこかヌケたやりとりも愛らしかった。そんな空っとぼけたおかしみを生かしたのが、映画『斉木楠雄のΨ難』でもあった。

『トドメの接吻』(c)日本テレビ

 逆に、彼が演じる新堂などを見ると、なぜこれまで「実写化専門俳優」とか「壁ドン俳優」みたいな売り方をしてきたのか、不思議に思えてくる。同じ売れっ子若手俳優でも、菅田将暉などはエンタメ大作からインディペンデント映画まで実にバランスよく出演し、人気とともに高い評価も得てきた。

 山崎ももう少し作品や役柄を選べば良かったのに……と思わなくもないが、おそらく最初から巧かったわけではなく、経験の中で学び、磨かれ、成長していったというのが実際のところではないかとも思う。

 余談だが、山崎は、芸能・エンタメ系記者の間で「記者泣かせ」と言われるのをたびたび耳にしたことがある。「すごく真面目でおとなしくて良い子だけど、コメントが記事にしづらい」という話だ。昨今はコメントも上手い役者が多いだけに、そんな評価が生まれるのだろう。

 だが、翻って「真面目でおとなしくて良い子」は、ちょっと不器用で謙虚で努力家という、大きな美徳になっているのではないか。

 ドラマ関係者によると、今作の役作りのために山崎は、プロデューサーと監督と2日間も綿密なリハーサルを行い、病院に訪れ、闘病中の子どもたちや先生に話を聞きに行ったという。そうした1つ1つの役に対する向き合い方、努力の積み重ねが、実を結び、評価につながったのが、たまたま今作だっただけなのかもしれない。


 「イケメン」は「個性派」より評価されにくいし、「若手」は「ベテラン」「下積みの長い苦労人」より評価されにくい。作品においていえば、大衆娯楽作や大作は、芸術性の高い作品や低予算・インディペンデント系より「評価」はされにくいのが、世の常だ。

 でも、エンタメ実写化に多数出演している若手イケメン俳優という要素だけで、舐めてかかったり、下に見たりするのがどれだけバカバカしいことか。山崎演じる新堂先生が、そんなくだらない偏見も打ち破ってくれた気がする。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『グッド・ドクター』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00放送
出演:山崎賢人、上野樹里、藤木直人、戸次重幸、中村ゆり、浜野謙太、板尾創路、柄本明ほか
原作:『グッド・ドクター』(c)KBS(脚本:パク・ジェボム)
脚本:徳永友一、大北はるか
プロデュース: 藤野良太、金城綾香
協力プロデュース:西坂瑞城
演出: 金井紘、相沢秀幸
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/gooddoctor/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる