アン・ハサウェイ、米批評家から大絶賛! 『オーシャンズ8』が参照したポップカルチャーを解説
『オーシャンズ8』がオール女性キャストである理由はなんだろう? 答えは「女性は無視されるから」。人目の多い場所で虚をつくには、男性より存在を無視されやすい女性のほうが有利。サンドラ・ブロック演じるデビー・オーシャンは、計画遂行のためーーつまりは「プロフェッショナル」な理由で女性を集めたのである。ただし、目的は窃盗。『オーシャンズ8』は「プロフェッショナル」なアウトロー女性が集った類を見ないスター映画だ。
ファッションの祭典メット・ガラを完全再現
『オーシャンズ8』は「プロフェッショナル」な映画であると同時に、シリーズ最高級に「ゴージャス」でもある。ターゲットは、1900年代初頭、当時の女性ディレクターの名を冠したカルティエの宝石トゥーサン。その宝石をスターに着用させ、ファッションの祭典メット・ガラで盗む大胆な計画だ。メトロポリタン美術館に300人のエキストラを動員したメット・ガラの完全再現はまさしくハイライト。その徹底ぶりは端役にまで及ぶ。実際の同イベント常連セレブリティがカメオ出演しているのだ。カイリー・ジェンナー、キム・カーダシアン、ジジ・ハディッド、セリーナ・ウィリアムズ……画面の端々にうつるセレブリティを探す遊びも楽しめるだろう。
主要キャストのドレスはドルチェ&ガッバーナ、ジバンシィ、ザック・ポーゼンといった名だたるメゾンがクチュールを提供している。ディレクションはアナ・ウィンターが行ったようで、ブロックは役名にちなんだ「オーシャン」柄のアルベルタ・フェレッティを着用。ミンディ・カリングには、インド系デザイナーによるナイーム・カーンがあてられている。余談だが、劇中アン・ハサウェイが着用したヴァレンティノのケープは7.5m。現実の2015年メット・ガラでリアーナが着用したグオ・ペイのオムレツドレスよりも長い。
ケイト・ブランシェットはキース・リチャーズ、リアーナはボブ・マーリー?
一方で、ポップカルチャーのリファレンスも興味深い。例えば、衣装のインスピレーション。ケイト・ブランシェット演じるルーの衣装はキース・リチャーズのようなロックスターを志向している。The Hollywood Reporterに掲載されたイメージボードではマドンナやフローレンス・ウェルチの姿も確認できる。リアーナ演じるナインボールはボブ・マーリーが強く意識されており、同じく女性ハッカーをルーニー・マーラが演じた『ドラゴン・タトゥーの女』も参照に挙がっている。衣装一つとっても膨大なカルチャー参照が行われた緻密なキャラ造形だ。
さらに踏み込むと、キャスト自身のパブリック・イメージが投影されたパターンも散見される。例えば、ルーはブランシェットと同じオーストラリア出身設定。ナインボールはリアーナと同じくウィード好きのバルバドス人だと明かされている。このように、キャスト自身のイメージまでリファレンスする『オーシャンズ8』だが、実は、その中でひときわ絶賛されたキャストがアン・ハサウェイだ。彼女が演じるのはスター女優ダフネ・クルーガー。インスピレーション元は伝説の大女優、エリザベス・テイラーだ。