斎藤工、物語に大きな展開を生む 『半分、青い。』祥平役で見せたリアルな人間像

斎藤工が体現する、もがく者の説得力

 ドラマ&映画『昼顔』で演じたキャラクターへのハマりっぷりから、“色気のある俳優”の代名詞的ポジシションに定着している印象も強い斎藤だが、一方、バラエティ番組などで見せるキャッチーなキャラクターはお茶の間にも広く浸透している。ジャンルレスに数多くの作品に参加するスタンスや、雑誌の誌面を飾ることも多く、彼に対して国民的俳優といった印象を持つ方も多いだろう。今年の活躍だけにしぼってみても、『MASKMEN』(テレビ東京系)や、先に挙げた『BG』、映画では『去年の冬、君と別れ』『のみとり侍』『サラバ静寂』と続く大作・話題作で、ひとクセもふたクセもある特異なキャラクターを演じ、いずれも作品に爪痕を残してきた。

 映画監督という特殊なキャラクターではあるが、今作での祥平の姿には多くの共感も生まれたのではないだろうか。『名前のない鳥』の原作者・佐野弓子(若村麻由美)が、涼次の仕上げた脚本について「この人才能あるよ」と評したときに曇る彼の表情、考えるより先に口をついて出た「俺が監督しちゃだめでしょうか」の言葉。このときの祥平を佐野は「捨てられた子犬のようで見苦しかった」と評する。このやりとりは観ていて苦しいものであった。祥平役について斎藤は、先述した『連続テレビ小説 半分、青い。 Part2』にて「芸術家の孤独や弱さ、きれいごとだけではない面など、いい意味で朝ドラっぽくないカラーが出せたと思います。役の心情を突き詰めてもがく部分をリアルに見せることで、同じようにもがく人々にエールや希望を送りたいと思って演じました」と語っている。自身も映画監督として『blank13』などを手がけていることや、すでに俳優として17年ものキャリアのある斎藤だが、やはり彼も似たような局面に立ったことがあるのだろうか。そんなことに思いを馳せてしまうほど、説得力のある姿であった。

 妊娠・出産と、新たな人生のステージに足を踏み入れた鈴愛だが、涼次ともども、一人前の大人としては頼りないし、夫婦としてもまだまだ不安なところである。鈴愛の周囲の人々の祝辞をビデオテープに収め、彼女だけでなく視聴者の涙をも誘うナイスプレーを見せたこともある祥平だが、今後彼はどういった関わり方をしてくるのだろうか。演じる斎藤と、永野、間宮の笑顔が反響し合う日を信じて、見守っていきたいところだ。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳/間宮祥太朗、斎藤工、嶋田久作、キムラ緑子、麻生祐未
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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