石原さとみ、吉岡里帆、松本穂香……“平成最後の夏”のドラマ、ポイントは主演女優にあり
多くの人々を寝不足に追い込んでいるワールドカップロシア大会も、残すところ準決勝と3位決定戦、そして7月15日深夜の決勝戦の4試合……ではありますが、そんな決勝戦を待たずして、本日7月9日の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(21:00~/フジテレビ系)を皮切りに、7月‐9月期の地上波プライムタイム連続テレビドラマが続々とスタートします。暦の上では、“平成最後の夏”を飾ることになる今期のドラマたち。そのラインナップは、果たしてどんなものとなっているのでしょうか。以下、“主演女優”に注目しながら、個人的に気になるものを3本ピックアップしてご紹介したいと思います。
『高嶺の花』(7月11日22:00〜/日本テレビ系)
まず、何と言っても注目なのは、今年の1月期に主演した『アンナチュラル』(TBS系)で各女優賞を総ナメにするなど、今最も勢いに乗っている“ドラマ女優”といっても過言ではない石原さとみを主演に擁する『高嶺の花』です。30歳を超えて以降は出演作を“脚本”で選びたいと公言する彼女がこの夏選んだのは、90年代前半、『愛という名のもとに』(1992年/フジテレビ系)、『高校教師』(1993年/TBS系)、『ひとつ屋根の下』(1994年/フジテレビ系)などの作品で一世を風靡した、野島伸司のオリジナル脚本です。
華道の名家の令嬢であり、自らも華道家として活躍するなど、美貌、キャリア、財力、家柄、さらには圧倒的な才能も持ち合わせた主人公・月島もも(石原さとみ)。人生を順風満帆に送ってきた彼女が、“結婚式当日の破談”という衝撃的な出来事によって自信崩壊。そのとき偶然知り合った、生まれ育った境遇から財力に至るまで、彼女とは真逆であるごく平凡な自転車店店主・風間直人(峯田和伸)と恋に落ちるという物語。しかし、“高嶺の花”と“地上の凡夫”の恋の前には、当然ながらさまざまな障壁が立ちはだかり……2人はそれを乗り越えることができるのでしょうか。
凛とした着物姿が美しい、石原さとみの姿に目が奪われる本作ですが、それ以上に驚いたのは、その相手役を演じるのが、ロックバンド“銀杏BOYZ”のメンバーとしてカリスマ的な人気を誇る峯田和伸だったことでした。もちろん、音楽活動と並行して、これまで数々の映画やドラマに出演、とりわけ近年は、NHK BSで放送された『奇跡の人』(2016年)に主演、さらにはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)に出演するなど(脚本はいずれも岡田惠和)、これまで以上に幅広い人々に認知、評価されてきた彼ですが、それにしても石原さとみの相手役、なおかつラブストーリーとは……峯田くん、何やら上り詰めた感がありますね。
ちなみに、芦田愛菜主演の『OUR HOUSE』(2016年/フジテレビ系)以降は、「地上波では描けない!」を売り文句とした配信ドラマの世界で、セックス依存症の女性を描いた『雨が降ると君は優しい』(Hulu)をはじめ、『パパ活』(FOD×dTV)、『彼氏をローンで買いました』(dTV×FOD)など、センセーショナルなラブストーリーを手掛けてきた野島伸司ですが、“怒濤の純愛エンターテインメント”と銘打った本作は、センセーションではなく、かなり王道的なラブストーリーとなる模様。かつて、『101回目のプロポーズ』(1991年/フジテレビ系)などで、“意外な2人の恋”を描いてきた彼は、“高嶺の花”、“格差恋愛”といった、やや古典的であるようにも思えるモチーフを、どのように現代にアップデートさせながら、物語を描き出してゆくのでしょうか。その主題歌が、エルヴィス・プレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」であることも含めて、まさしく“野島ワールド”全開の1本になりそうです。
『健康で文化的な最低限度の生活』(7月17日21:00〜/カンテレ・フジテレビ系)
続いて注目したいのは、吉岡里帆が主演する『健康で文化的な最低限の生活』です。『カルテット』(2017年/TBS系)の“来杉有朱”役で鮮烈な印象を残して以降、『ごめん、愛してる』(2017年/TBS系)、『きみが心に棲みついた』(2018年/フジテレビ系)など、テレビドラマの新たな“主演女優”として、着実にローテンション入りを果たしたようにも思える吉岡里帆。そんな彼女が今回演じるのは、平凡で等身大な新人公務員“義経えみる”。入職して早々、「生活課」に配属された彼女は、そこで「生活保護」のリアルな現場と、そこに存在する数々の人間ドラマを見ることになるようです。
いわゆる“生活保護”のリアルな実態に切り込み、メディアのみならず、現役ケースワーカーや医療福祉の現場からも高い評価を受けている、柏木ハルコの人気漫画のドラマ化である本作。“えみる”の指導役であり、よき理解者でもある先輩・半田明伸を、『アンナチュラル』の“中堂系”役の好演も記憶に新しい井浦新が、彼女の上司役を、こちらも『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の好演が記憶に新しい田中圭が演じることをはじめ、彼女の同期役を演じる川栄李奈、山田裕貴といったレギュラー陣、さらには毎回異なるゲスト出演者によって演じられる生活保護受給者(初回は遠藤憲一)など、キャストのアンサンブルが大いに期待される本作ですが、主演の吉岡里帆にとって重要なのは、本作が“ラブストーリーではない”ということであるように思います。
これまで、長瀬智也(『ごめん、愛してる』)、向井理(『きみが心に棲みついた』)など、なぜか年上の男性に翻弄される役が多かった印象のある彼女ですが、今回はあくまでも視聴者目線の等身大の主人公が、知られざる「生活保護」の実態に触れながら“成長”してゆくという物語。いわゆる“ラブストーリー”ではありません。「真面目ではあるものの、人の気持ちや空気が読めないところがあって、それがコンプレックスとなっている天然系女子」という、彼女がこれまで演じてきた人物と、どこか共通するキャラクター設定が少々気になるものの、そこで「どれだけ視聴者の共感を掴むことができるのか?」が、本作の大きなポイントになるのではないでしょうか。ある種“社会派”とも言える骨太な物語に、どれだけ視聴者の興味と共感を集めることができるのか。吉岡里帆の女優としてのステップアップという意味でも、大いに注目したい1本です。