『半分、青い。』永野芽郁が追い詰められ崩れ落ちていく 「東京・胸騒ぎ編」終幕へ

『半分、青い。』「東京・胸騒ぎ編」終幕へ

 次のシーンは、鈴愛が秋風に描きあげたネームを見せる場面となるが、ここで筆者は北川の神回予告に納得した。カメラは、鈴愛の顔をアップに捉えるが、彼女の表情が映し出すのは、何も期待していない、虚無の心情。取り繕ったような言葉を秋風にぶつけた末に待っているのは、「クソだ」という秋風からの叱咤激励、そう信じていた鈴愛に、秋風は「ああ、うん。いいんじゃないか? よくまとまっている」と投げやりな言葉を送る。すると、鈴愛の表情は虚無から落胆へと変わっていく。秋風から返ってくる言葉は分かりきっていたとしても、ユーコとボクテ、3人で学んだ秋風塾の頃のように、鈴愛は叱ってほしかった。愛の反対は憎しみではなく無関心、というのはマザー・テレサの言葉だが、鈴愛はその秋風の言葉から自分を見限ったのだと判断し、澱のように溜まっていた思いの丈をユーコとボクテにまでぶちまける。結婚の機会を逃し、漫画も売れず、28歳。鈴愛にも、とうに限界はきていた。

 けれど、秋風は鈴愛を見限ったわけではない。秋風は自分の弟子を家族のように大事にする。破門にしたボクテの漫画家としての道をさりげなく働きかけ、ユーコが出て行った秋風ハウスに居場所を残したように。秋風が鈴愛に送った愛の言葉は「漫画を描け」。10年間にも渡る鈴愛と秋風の出会いは、ネームなしでいきなり描く、ときめきに満ちた漫画『神様のメモ』から始まっていた。

 折り返し地点に入った『半分、青い。』は、およそ2カ月に渡った「東京・胸騒ぎ編」も、次週から「人生・怒涛編」へと移り変わっていく。秋風をはじめとした個性豊かな面々がメインとなる週は次がラスト。鈴愛は、漫画家として再起をかけられるのか。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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