小瀧望、作品引っ張る役を演じ切る“強さ” 青春を駆け抜けるような『プリンシパル』の構成を紐解く
このように役者の強さにリードされながら、本作は、恋に落ちて、自覚するまでの描写が丁寧すぎるほど綿密に描かれていた。人は誰かを好きになってすぐ、大好きだと自覚するわけではない。嫉妬したり、焦れったく思ったり、ふとした生活で思い出したり、そんな些細なことを繰り返して強く惹かれるようになる。本作はその様子を糸真の家庭環境や、高校内での人間関係を器用に絡めながら、1本の糸にしていくように糸真の真実の気持ちへと導く。そこでは弦自身が、そして和央や晴歌など周りを取り巻く友人たちが時にそっと手を取り導き、時に強引に背中を押してくれる。まさに青春を駆け抜けるような作品である。
また、物語の中盤では、糸真が気持ちを伝えても、物語は彼女が思うように進展しない。そして最後の最後にやっとお互いの愛を確認し合うような構成である。これは従来ディズニーがプリンセス映画で使ってきたお約束の展開と類似しており、『リトル・マーメイド』でのアリエルとエリックや、『塔の上のラプンツェル』のラプンツェルとフリンなど、真実の愛にたどり着くまでに紆余曲折を経ている。王道のプリンセス映画の構成を使用した本作はまさに、多くの女性にとってもより魅力的に映る。
北海道の大自然の中でみずみずしく描かれ、素直になれない弦と糸真を応援する周囲の人たちの愛情は、高校生という若さならではの勢いと強さがある。恋が始まるところ、そして結ばれていく様子が丁寧に描かれ、春の訪れに似合う爽やかな作品になったのではないだろうか。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■公開情報
『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』
3月3日(土)全国公開
出演:黒島結菜、小瀧望(ジャニーズWEST)、高杉真宙、川栄李奈、谷村美月、市川知宏、綾野ましろ、石川志織 中村久美、鈴木砂羽、白石美帆、森崎博之
原作:『プリンシパル』いくえみ綾(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:篠原哲雄
脚本:持地佑季子
音楽:世武裕子
配給:アニプレックス
(c)2018映画「プリンシパル」製作委員会 (c)いくえみ綾/集英社
公式サイト:http://principal-movie.jp