小瀧望、作品引っ張る役を演じ切る“強さ” 青春を駆け抜けるような『プリンシパル』の構成を紐解く

『プリンシパル』で紐解く王道プリンセス映画

 累計発行部数150万部突破の人気少女漫画『プリンシパル』(集英社)が、旬の若手キャストを迎え実写映画化された。本作では、ヒロインの住友糸真役を黒島結菜が、その友人の国重晴歌役を川栄李奈が演じている。友人同士という役柄の黒島と川栄は、TBS系ドラマ『ごめんね青春!』でも同様に同級生役を演じており、息の合った演技でクライマックスを盛り上げた。川栄は、『ごめんね青春!』からは雰囲気の違う役柄での黒島との共演ながらも、恋が絡む女同士の友情の切なくゆらぐ様子を体当たりで演じ切っている。黒島もそれに対し、誠心誠意応えようとする演技で女優としてのポテンシャルの高さを感じさせた。

 主人公の糸真は、東京の高校に馴染めず逃げるように北海道の高校へと転校。そこで出会った俺様系の舘林弦(小瀧望)とゆるふわ系の桜井和央(高杉真宙)と仲良くなるが、学校イチのモテ男の2人と距離が縮まることで、また女子から距離を置かれてしまう。一方、転校初日から仲良くしてくれていた晴歌も弦に恋心を抱いており、弦たちと距離を縮める糸真を快く思わず2人の間には亀裂が入る。

 作品の導入部分では、糸真が弦の強気な態度に反発しながら、優しく穏やかな和央に惹かれていく様子が描かれていく。それは弦と和央の友情、始まったばかりの糸真の小さな恋心しか絡まない些細な日常であった。しかしその後、意図せず和央との恋のタイミングがずれて弦と糸真の友情が育ち始めてゆく。それは和央から借りたマフラーを直接本人に返せなかったり、晴歌からのいじめで心を痛めていた糸真を弦が慰めたりなど、小さなタイミングだった。しかし恋愛においてこのちょっとしたタイミングは恋の舵を大きくきることとなる。

 糸真は気がつかないうちに弦に惹かれていくようになるのだ。それが恋なのか、友情なのか、定かではないままに想いは募る。しかし弦の姉・弓(谷村美月)のピアノの発表会やキャンプでの出来事で次第にその想いは浮き彫りになっていくのであった。

 糸真が惹かれていく弦というキャラクターは、実は演じることが非常に難しい役だったのではないだろうか。言葉の強さのせいで、どうしても印象が悪くなってしまいそうに思えた。しかし小瀧は、語気の強さやそっけない態度とは裏腹に、愛情深く誰も傷つけないようなまっすぐな人である弦という役を好演した。時に寂しそうに、時に心を痛めたような顔をしながら、和央とも糸真とも晴歌とも、まっすぐに接してきた。弦は本作の中で、実は誰よりも多くのことを受け止めた役であり、弦を演じた小瀧は、初主演でありながらしっかりと全体を引っ張る役を演じ切る強さを見せた。

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