松本利夫が語る、“やらされてる感”の面白さ ワンマンSHOW『MATSUぼっち05』に向けて
EXILE MATSUこと松本利夫によるワンマンSHOW『MATSUぼっち05』が、本日2月2日より品川プリンスホテル クラブeXにて開催される。同公演は3月までかけて、東京、大阪、新潟、札幌、仙台の5都市で行われる予定だ。今回のワンマンSHOWのテーマは“レコード”。「人生はレコードのようなものである」との発想をもとに、松本利夫が様々な人生を演じる。
リアルサウンド映画部では今回、松本利夫にインタビュー。ワンマンSHOW『MATSUぼっち』の見どころはもちろん、本企画が立ち上げられた経緯や表現者としての現在地についてまで、幅広く話を聞き、その独自の世界観に迫った。聞き手はライターの西森路代氏。
無茶ぶりの部分にはこれっていう正解がない
――『MATSUぼっち』というと、フジテレビで放送中のテレビ番組の印象が強いのですが、番組が始まった2016年よりも前の2011年から『松本利夫ワンマンSHOW 「MATSUぼっち」』はスタートしているんですよね。この『MATSUぼっち』はどんなきっかけで始まったんでしょうか。
松本利夫(以下、MATSU):僕が2007年に劇団EXILEの旗揚げ公演の『太陽に灼かれて』に出演したとき、この舞台のプロデューサーの松田誠さん(ネルケ・プランニング)に、「まっちゃん、一人舞台やってみない?」と言ってもらって。当時はがむしゃらだったので、「ぜひやります!」とすぐに答えました。ただ、勢いでやると言ったものの、実際は何をやるのかは想像もしていなくて。松田さんから、演出家を紹介してもらい、公演の日程や会場が決まっていき、台本もできあがり……。当時はどちらかというと「やらされてる感」の強い舞台でしたね。
――松田さんと言えば、先日『情熱大陸』に出演されていたばかりですけど、MATSUさんとそんな繋がりがあったんですね。
MATSU:そうなんですよ、『MATSUぼっち』ってネーミングもチャーミングでいいんじゃない?って考えてくださったのも松田さんなんです。
――それがどのようにテレビへとつながっていったんですか?
MATSU:番組をやらないかという話をいただいて、コンセプトについて話していたとき、番組もひとりでやるし、舞台もひとりでやっているから、同じ名前でいいんじゃないかということで、『MATSUぼっち』というタイトルを、テレビでも使わさせていただくことになりました。しかも、「やらされてる感」というキーワードもプロデューサーに気に入ってもらって、番組自体の内容も、ひとりで未知なる体験をしにいくというものになりました。実際は、スタッフに無茶ぶりされているMATSUという構図で毎週やっていて、いまはもう無茶苦茶ですよ(笑)。でも、自分でも楽しんでますし、スタッフとの信頼関係とかも築いていますし、そういう仲の良さも見てもらいたいなと思っています。虫を食べさせられるのとかは、今でもちょっと勘弁ですけどね(笑)。
――舞台の『MATSUぼっち』は、4回目からは、MATSUさんが「やらされてる」だけじゃなくて、原案から関わるようになったそうですね。
MATSU:3回目までは、演出家さんの世界観で台本ができてきて、そこからスタートするということで楽しんでやっていたんですけど、今は、演出家さんと一緒に作らせてもらっている感じです。自分のパーソナルな色が反映しているし、ストーリーも含めて、前よりもさらに自分にしかできない舞台になってきているんじゃないかと。
――以前とはどんな風に違ってきているのでしょうか。
MATSU:もともとの舞台は、一人芝居で、僕は何かの役になりきって登場していたんですよ。例えば一回目だったら、修学旅行中にラフォーレ前でみんなとはぐれてしまった学生の「松くん」として登場するんですけど、今は松本利夫として登場します。不思議なもので、役として登場すると、客席はじっと舞台を見ていたんですけど、素の松本利夫として登場すると、わって歓声が湧くんですね。そんなに反応が違うということは幕が上がるまでは予想できなかったです。それに、僕自身が素で登場すると、アットホームな感じで、一体感のある舞台になるんですよ。
――役で登場するか、素で登場するかでそんなに違うんですね。
MATSU:そうやって素の状態でやっていると、客席のファンから話しかけられたりするんですよ。あるときは、大阪でお客さんが本番中にステージに上がってきて、「まっちゃん、ライブ行ったで」って(笑)。そんな空気が流れるくらいアットホームな空間だったので、逆にそれを生かして、どこまでがアドリブで、どこからが台本なのかわからないというのが、この舞台のおもしろさじゃないかと思いますね。
――今回の舞台でも無茶ぶりもあるんですか?
MATSU:ありますね。今回はサックスをまた演奏するので、練習をしているところなんですけど、大変ですね。毎回、いろいろ挑戦する部分があるんですけど、それがうまくいくからって面白いわけではないし、うまくいかないのも味というか。僕が焦っている姿が楽しいという人もいるだろうし、言葉をなんとか絞り出そうとしているのに、出てこない、みたいなことが面白いということもあるでしょうしね。無茶ぶりの部分にはこれっていう正解がないからこそ面白いと思うんですよね。
――『MATSUぼっち』でも、MATSUさんの口から「ヤバい」という言葉しか出てこないってよく言われてますけど、それが心から出たMATSUさんの言葉だからこそ面白いというのはありますよね。MATSUさんは、受け身であるときの面白さがあるんじゃないでしょうか。
MATSU:自分でもそういう風に面白く見てもらえるんだったら、そこを広げたほうがいいのかなと思っています。それに、そんなMATSUだからこそ、ときにはちゃんとダンスをやるとギャップになりますしね。『MATSUぼっち』は、その場で生まれるものとか、生感というものが楽しいんだと思います。