松本利夫が語る、“やらされてる感”の面白さ ワンマンSHOW『MATSUぼっち05』に向けて

なにげない選択を重ねて今がある

――MATSUさんが原案を手掛ける4回目からは、徳尾浩司さんが演出を手掛けるようになったんですね。

MATSU:徳尾さんとの出会いもやっぱり松田さんの紹介でした。「まっちゃんに合うと思うんだよね」って。徳尾さんは、物腰も柔らかくて、僕の意見も尊重してくれるし、舞台自体が「決め決め」ではやっていないので、アイデアを自由に出し合って、いいバランスでやらせてもらっています。

――今回の舞台でも、挑戦の部分以外に、お芝居で見せる部分もあるんですよね。

MATSU:どちらかというとひとり芝居のほうがメインで、僕が誰かの人生を疑似体験するというお芝居になります。だから、例えば外国人のリチャードという男性の人生を、松本利夫が疑似体験する場面があるんですけど、あくまでも、リチャードの身体の中にいるのは、松本利夫のままだから、外国人の彼女から英語で話しかけられても、意味がわからないという。

――なかなか、ほかでは見ない設定ですね。

MATSU:けっこう徳尾さんと一緒にいろいろ考えましたね。今回は、誰かの人生を体験したことで、自分の人生について考えるというのもテーマなんです。僕自身が、もしもダンスをしていなかったら、どんな人生になっていたのだろうかと。だから、今回の劇中で、僕は別の人生を送っている設定なので、靴職人をやっているんです。

――やっぱり、ダンスと出会わなかったら違う人生だったのかもなって考えることはありますか?

MATSU:誰でも一度は考えるものじゃないですか、この仕事をしてなかったらどうなるんだろうとか。自分だったら、あのとき奥さんに出会ってなかったら、あの人に出会ってなかったら、今頃どんな暮らしをしてたんだろうって。ほんのちょっとのことで、まったく違った人生を歩んでいたんだなって。ただ、ダンスをしたからって、今の自分にたどり着けるわけでもない。なにげない選択を重ねて今があるんだなって。

――最近の選択でいうと、MATSUさんの場合、やっぱり舞台があると思うんですけど。

MATSU:ずっとダンスにしか興味がなかった僕が、劇団EXILEの第1回公演をきっかけに、ひさしぶりにはまったのがお芝居だったんです。ダンスでは、とにかく練習してうまくなりたかったんですけど、久々にお芝居というものでそういう燃え滾る気持ちになりました。僕、何かにはまると、理想と現実の間でもどかしくなって、必ず嫌になる時期が来るんですけど、芝居にもそういう時期はあったんです。でもそれを超えて、もう1回踏み込んでやってみたいと思えたのは、やっぱり芝居が好きなんだな、楽しんでいる自分がいるんだなって思います。だから、EXILEのパフォーマーを卒業して、次にやるのが芝居ですよっていうよりは、好きな道があったから、そのまま素直に進んでいる感じなんです。

――MATSUさんの場合は、自分で演出をすることもあるし、外部のお芝居に出られることもありますが。経験してみていかがでしたか?

MATSU:自分で演出してみて初めて、景色が違うなと思う部分がありました。昔、縁者しか経験していなかったときは、稽古場でも単に演者としての心構えでしかその場を見ていなかったんです。でも、演出家を経験したら、責任も強くなるし、その場を全部見えたうえでまとめないといけないし、常にプレッシャーがかかった状態で、いろいろなものを見る角度が違ってきました。そういう経験をしたことによって、ほかの舞台に出たときも、こういう画が欲しいんだろうなとか、こういう表現が欲しいんだろうなというビジョンがわかるようになってきました。演出をすることによって、自分にはこう見えているものがあっても、演出家が欲しいものは違うのかもしれないと、そういうことがわかるようになりました。客観的に自分を見ることができるようになったということですかね。

――ダンス表現と芝居につながってる部分はありますか?

MATSU:僕はダンスをするときには、こんな踊りがしたいなっていうことを、実際できないことでも想像するようにしているんです。踊っていないときも、なにかしら映像を思い浮かべていたので、芝居でもそういう風に映像を思い浮かべることはあります。その通りに出来たらいいんですけど、できないから悔しくなります。でも、実力がないと実感するから、もっともっとって練習をするし、そういう気持ちが活力になるんです。

――これから、どんな役を演じたいというイメージはありますか?

MATSU:どんな役をいただいてもその役はこの世の中にはひとつなので、どんなものでもありがたく全力でやらせていただきたいけど、人間の想像を超えたような、考えられないような人をやってみたいです。けっこう自分を追い込むのが嫌いじゃないので。

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