志尊淳、『女子的生活』のテーマを体現 制作陣の熱意詰まった最終回を振り返る

『女子的生活』制作陣の熱意詰まった最終回

 ももいろクローバーZの玉井詩織のOL姿、劇団EXILEの町田啓太がクールなイケメンではなくひょうきんな役を演じる姿、そして何より志尊淳が“トランスジェンダー”の小川みきを“女装”して演じる姿に興味を持ち、NHKドラマ10『女子的生活』を観始めた視聴者は多かったことだろう。しかし、蓋を開けてみれば、“人間の面白さ”、“生きていくことの面白さ”が詰まった、いまを生きるすべての人に届く作品に仕上がった。

 1月26日放送の最終回では、第1話から散りばめられた小ネタをふたたび登場させながら、“時間”をひとつのテーマに描いた回だった。みきとカオリ(玉井詩織)は、仕事の関係でタワーマンション最上階で行われるセレブ合コンに参加する。手料理一品持参というルールを課せられたふたりが用意したものはポテハム(ポテトサラダをハムで包んだもの)。みきが同居していた後藤(町田啓太)の発言をヒントに作ったものだ。ほかの参加者が用意した豪華な肉塊のローストビーフよりも、ポテハムは男性陣の人気を集める。後藤の言葉を借りれば「男子の舌は中2で止まる」からだ。人は年齢を重ねても、幼い頃に好きになったものは変わらない。しかし、「中2」よりもさらに前、「おふくろの味」を繰り出してきたのが、合コンの主催者・セレブお嬢様のマナミ(土村芳)だ。

 マナミに合コンのペースをもってかれたみきとカオリは、“狩り”を諦め会場を後に。カオリは「孤独死とか怖いなって思う瞬間がある、でも結婚してもそのリスクはあるのに、何で結婚したらオールクリアみたいな気分にさせられるんだろうね」とミキに疑問を投げかける。みきは「たぶんそれは…そういう生き方が正しいってすり込まれてるからじゃないかな」と返す。どんな人にも当てはまる、“正しい生き方”などあるはずはない。しかし、人は正しいレールに乗ろうとし、自分を偽り、ときに自分の中の正しさを他者に押し付けてしまう。好きなもののために生きているみきは、そんな“こうあるべき”生き方とは真逆。だからこそ、人それぞれの価値観を認め、相手を思いやる優しさが備わっている。何気ないふたりの会話シーンだったが、志尊が演じた小川みき、そして本ドラマ制作陣の熱意が伝わる一場面であった。

 みきのことが気に入ったマナミは誕生日を祝うために自宅におしかける。そこに現れるのがマナミの婚約者・ケンイチ(山口翔悟)だ。ケンイチは、みきを“普通じゃない”存在と決めつけ、上から目線で暴言を吐いていく。その発言に反旗を翻すのが、再び家に帰ってきていた後藤だ。思えば第1話で登場した際の後藤も、久々に会ったみきに対して失礼な言葉を浴びせた。しかし、後藤とケンイチで決定的に違うのは、理解しようとする心があるかないか。後藤は冗談めいた口調から、徐々に高飛車なケンイチの態度を攻め、「あんたに小川の何が分かる?」と語る。これまでひょうきんな演技で作品に温かみをもたらしてきた町田だったが、みきのために怒りを見せたその表情は、本ドラマ一番の“格好良さ”が詰まった名演だった。

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