19歳の女優エル・ファニングはすでに完成されている 『パーティで女の子に話しかけるには』での存在感

『パーティで女の子に話しかけるには』評

 それらをすべて許容してしまうのは、エル・ファニングという女優の存在が圧倒的だということに他ならない。いつのまにか、姉ダコタを凌駕する存在へと昇華した彼女。たとえば『SUPER 8/スーパーエイト』の、映画オタク少年の心をくすぐるかのようなヒロインに端を発し、最近では『20センチュリー・ウーマン』の少し背伸びをした少女の様子。いずれにしても、冴えない男子は彼女が半径1mに近づいただけで、突き動かされずにはいられなくなるのかもしれない。

 ツリーハウスの中で佇み、手をまっすぐ伸ばして自分の腋を触れさせるシーン、大きく開いた口をアレックス・シャープと重ね合わせる場面、そして派手なメイクを施されてパンクロックを即興で披露する場面。すべてにおいて彼女に魅了されていく。もっぱら、エンの家のトイレを飛び出して、走り始める疾走感で、この映画は傑作になると確信せずにはいられなかったのである。

 これまでのエル・ファニングは、たとえばソフィア・コッポラ、フランシス・フォード・コッポラ、デヴィッド・フィンチャー、J.J.エイブラムスなど、巨匠から新進気鋭の作家まで、あらゆる作家の作品にこの上ない華を添えてきている。まだ19歳だなんて信じられないほどに、完成されている女優だ。このまま一線級を駆け抜け続け、女優という存在の歴史をすべて覆すことになっていくはずだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『パーティで女の子に話しかけるには』
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中
監督・脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
原作:ニール・ゲイマン「パーティで女の子に話しかけるには」
出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン
配給:ギャガ
(c)COLONY FILMS LIMITED 2016
公式サイト:http://gaga.ne.jp/girlsatparties

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