西島秀俊に漂う怪しい香りーー『奥様は、取り扱い注意』理想の夫はなにを隠す?
伊佐山勇輝(西島秀俊)のミステリアスな香りが色濃くなりつつあるーー。
『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)では、毎回冒頭で伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、幼少期からのワケありの半生を振り返る。人には言えない過去を捨て、日々挑む平凡な主婦としての現在の菜美を受け止めているのが、夫である勇輝(西島秀俊)だ。このところ彼の怪しさが止まらない。
勇輝は菜美がセレブ合コンパーティーで一目惚れした、運命の旦那様。華やかな会場に颯爽と登場し、大勢の女性たちの中から菜美を見つけ出した。開口一番「君はここには似合わない」と言い放ち、菜美を外に連れ出す。そして優しく微笑みかけながら菜美の話を聞く姿は、まさに王子様のようだった。こうしてトントン拍子で2人の結婚生活は始まる。
菜美が新米主婦として健気に奮闘するかたわら、主婦仲間である大原優里(広末涼子)や佐藤京子(本田翼)らとともに、町の主婦たちに起こるトラブルを推理とアクションで解決していく構成の本作。勇輝のポジションとしては、物語の冒頭で姿を見せ、現在の菜美を受け止めてくれる存在であることを提示し(彼は今のところ菜美の過去を知らない……はず)、2人の微笑ましい夫婦像、優しき夫像を見せる。中盤ではトラブルに直面する菜美の良き理解者として真摯に相談に乗り、時には夜のパトロールに出たりと、菜美たちにとって、絶対的な味方であることを表明するかのように協力的な姿勢を見せる。そしてラストでは、視聴者にとってもサービス的な、菜美へのご褒美でもある露骨な王子様っぷりを披露するのだ。優里の夫・啓輔(石黒賢)や、京子の夫・渉(中尾明慶)が次々にダメな部分を露呈していくさまと、ついつい比較してしまうと、隣にいることが誇らしくなるような、あまりにできすぎた夫像である。
ところがここ最近、菜美を、そして視聴者を、勇輝が翻弄し始めた。靴下の脱ぎっぱなしや、ついつい約束を忘れさらにはそれをズルズル先延ばしにしたりと、ちょっとしただらしない一面、一般的なダメ夫ぶりを見せ始めたのだが、あれだけの王子様っぷりである。これくらいはご愛敬、といったところだろうか。菜美たちの家出に途方に暮れる3人の夫たちの中、勇輝は「彼女の優しさに甘えていた」と口にしていた。
問題は菜美のモノローグにあった「愛する人から、初めて嘘の匂いがした」の通り、怪しさが加速しているということ。思えばトントン拍子で始まった結婚生活を、何の疑いもなく受け入れ、第9話まできてしまったが、勇輝は謎の多いまま。第1話から勇輝の口にする甘い言葉の数々には、真剣味や誠実さと同時に、どこか胡散臭さを感じてしまっていた。しかし、やはり演じる西島のスマートな色気によって、この“胡散臭さ”は“ミステリアス”な魅力として機能していたように思う。