『IT/イット』監督が語る、恐怖を与えるために必要なこと 「共感できるキャラ作りを意識している」
スティーヴン・キングが1986年に発表したホラー小説『IT』を新たに映画化した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が、11月3日に公開される。本作では、平和で静かな田舎町を舞台に、内気な少年ビルと仲間たちが、何かに恐怖を感じるたびどこへでも姿を現す“それ”に立ち向かう模様が描かれていく。監督を務めたのは、ギレルモ・デル・トロが製作総指揮を務めたホラー映画『MAMA』で長編映画監督デビューを果たし、本作が2本目の長編監督作となったアンディ・ムスキエティ。
リアルサウンド映画部では、ムスキエティ監督に電話取材を行い、スティーヴン・キングの原作を映画化するにあたって意識したことやペニーワイズ役のキャスティングについて、さらに、彼がこれまでに影響を受けてきた作品や、本作との共通点も多いテレビシリーズ『ストレンジャー・シングス』などについても訊いてみた。
「みんなに共感してもらえるようなキャラクター作りを意識している」
ーースティーヴン・キングの原作同様、今回の映画版もホラーの要素と青春ドラマの要素がうまく調和していて、それが作品全体の雰囲気を決定づけていると感じました。映画化にあたって、このホラー要素と青春ドラマ要素のバランスを取ることは難しくはなかったですか?
アンディ・ムスキエティ(以下、ムスキエティ):両者のバランスを取ることは、実は特別チャレンジングだったとは思っていないんだ。スティーヴン・キングはストーリーテリングのマスターだから、僕はその完璧な原作を生かしたまでだよ。それよりも、僕は常に観客を怖がらせるために、みんなに共感してもらえるようなキャラクター作りをすることを意識している。前作の『MAMA』もまさにそうで、そのために、ただ単純にホラーということではなく、愛とは何か、愛を喪失することはどういう意味を持つのか、人生とは何なのか……ということまで掘り下げた作品にした。今回もその基本的な考えは変えずに、もっと様々な要素を取り入れ、より大きな物語にしようと考えたんだ。
ーービル・スカルスガルド演じるペニーワイズは本作で強烈な印象を残しました。作品を象徴するような重要なキャラクターであるペニーワイズ役に彼を選んだ理由は?
ムスキエティ:今回のペニーワイズには、従来のピエロではなく、キュートで無垢な赤ちゃんのようなところがありながらも、少し表情を変えると怖くなる、神話っぽさも出したかったんだ。驚くべきことに、ビルはその要素をすべて持ち合わせていた。オーディションで彼の演技を見て、本当にスゴいと思ったんだ。「ペニーワイズはこういうキャラクターにしたい」と自分が頭の中で考えていたコンセプトとまさに合致していたからね。それがキャスティングの決め手だったよ。
ーービジュアル面ではどのようなことを意識しましたか?
ムスキエティ:原作には、主人公のビル・デンブロウが「僕たち子どもは、大人によって『“IT”は子どもたちを食べる』と刷り込まれているから、“IT”が見えるんじゃないか」というように推理する表現がある。そもそもモンスターというのは、子どもの想像があってこその存在、子どもたちの想像の産物だということ。だから、子どもの脳内にあるミソロジーを具現化したルックスにすることはかなり意識したよ。
ーーあなたにとって長編デビュー作となった前作『MAMA』もホラー映画として非常に斬新な作品でした。そもそもあなたはどのような作品から影響を受けているのでしょうか。
ムスキエティ:それこそ、この作品の原作者であるスティーヴン・キングの小説は13歳の頃から読んでいたよ。初めて読んだのが『ペット・セメタリー』で、『骸骨乗組員』『深夜勤務』『シャイニング』を経て、14歳で『IT-イット-』を読んだのを覚えている。僕が幼少時代に非常に大きく影響を受けた他の作品を挙げるとすれば、クライヴ・バーカーや(ハワード・フィリップス・)ラヴクラフトの作品なんかがそうだね。